Garbage Collection


2008-02-05

§ *Brompton M3L

ある日突然、奥様が「折りたたみ自転車を買うのだ!」と高らかに宣言したので、「ボクも、ボクも〜」と華麗に便乗(ま、ひとりだけ折りたためても意味ないしね)。フォールディングバイクの聖地、和田サイクルで2台まとめて大人買い。わぉ!

というわけで一週間ほど乗り回した感想。

走行性能は、ロードレーサーには遠く及ばないけれど、ママチャリに比べれば遥かに高い。展開したときのホイールベースはロードレーサーとほぼ同じ、各部の剛性も高くて、走行中の安定性に不安は全くない。シートを上げれば結構効率よく踏めるので、たぶん50kmぐらいのショートツーリングであれば何の問題もないと思う。

乗り心地はかなり硬め。タイヤの口径が小さいのでどうしても路面の凸凹をダイレクトに拾ってしまう。まあ、これは小口径の宿命だから仕方がない。リアはサスペンションがあるからさほどでもないけれど、フロントの振動はグローブ必須、という感じ。ただし、これは骨盤を立ててフロントから荷重を抜いた姿勢(MTBやロードレーサーに乗るときのフォーム)を取るとかなり楽になる。

ギアが3段しかない点については、もともとあまり変速操作をしないので、さほど不都合は感じない。真ん中がかなり絶妙なギア比なので街中ならほとんどこれだけで走れる。ただ、頻繁にアップダウンがあるとか、峠を走るなんていうともう少し下があってもいいかもしれない。まあ、これくらいなら足のほうがギア比に適応しそうな気もするけどね。

折りたたみ能力はすばらしいの一言。折りたたんでしまえば、サイズは小さめのトランクぐらい。折り畳んだ状態がほぼ正方形になるのと、自然に各部がロックされてきっちりまとまってくれるおかげで、かなりハンドリングしやすい。普通に電車やバスに持って入れる(さすがに満員電車は辛いけど)。

特筆すべきは、畳んだ状態で自立し、チェーンなどのデリケートで服などに汚れが付きやすい部分が内側になること。つまり、持ち運ぶ時に自立させておけば、人に迷惑をかけたり、壊れる心配をしなくていい。これはかなり安心感がある。

最大の欠点は重いこと。12kgぐらいあるので、片手でぶら下げて歩くとかなり辛い。本来ならば、折りたたむとキャスターが使えるので、ハンドルだけ立てて引っ張るという手があるんだけれど、日本では公共の交通機関を使う場合は袋で包まなければならないので、いまいち使い勝手が悪い。このあたりは一工夫したいところ。

改造やオプションパーツについては、さすがにユーザーも多くて事例も山ほどあるけれど、元々の完成度がかなり高いので不用意に手を入れるとバランスを崩しそうな気もする。体や心がBromptonに慣れた頃にまた考えようかな。

***

と、くだくだと書いておいてなんだけれど、実はこういう瑣末なことは、かなりどうでもいい。なにしろこれ、すごく楽しいのだ。

使えば使うほど(というほど使っていないけれど)、この走行性能と持ち運びやすさのバランス取り方はすごいと思う。なんとなく、「折りたたむこともできる」ではなく「折りたたんで使うのが前提」という感じ。そういえば、後輪を折り畳んだあの独特の停車姿勢は、なんだか「折りたたまれるのを待っている」ようにも見える(ちなみに、奥さんはあれを「お座り」と呼んでいる)。

「お座り」するBrompton(奥さんが沖縄に輪行した時の写真/2013.01.14追加)

慣れれば畳んでバッグに入れるのに1分かからない、サイズ/重量感は小型のトランクぐらい、それでいて走り出せばママチャリを遥かに凌駕する走行性能、というトータルでの機動性の高さは「移動する」ということに対する認識を変えてしまうような気がする。少し大げさかもしれないけれど、この感じは、初めて自転車に乗れたときのぱぁーっと世界観が広がる感じに似ている

何となく走り出す。目的地もルートも決めなくていい、天気やトラブルの心配もいらない。気が向いたところで電車かバスに乗せればいいだけ。あるいは、自宅を中心に半径30kmの円を描いてみる。自転車で日帰りできるのはせいぜいこのくらい(いや、中には一日200km走る猛者もいるけれど)。もしこの円の中心を他の場所に持っていけたら ... 楽しいと思わない?

決して安い買い物ではないけれど、この小さな自転車は乗る人間の世界観をほんの少し変えてくれる。これは、なかなかすごいことじゃないだろうか。