2006-06-28
§ **スペースシャトルは本当に欠陥品なのか?
本タイトルの記事にはコストの計算に誤りがあったため、当該部分を削除、改題しました。お騒がせしました。なお、参考までに下記に修正した数字を掲載しておきます。
参考)~
ソユーズの打上げコスト(3人):6500万ドル=75億円*1~
アリアンVの打上げコスト(18t):180〜216億円~
プロトンKの打上げコスト(21t):108〜118億円~
H2Aの打上げコスト(10t):75〜85億円~
スペースシャトルの打上げコスト(7人、28.8t):800億円 ※予備機含む~
(コロンビア事故以前の打上げコスト:500億円※予備機含まず)
ソユーズとカーゴロケットで、スペースシャトルと同じことをしようとすると、~
ソユーズ3台 + 予備機3台 = 375億円※予備機を2台分として計算~
カーゴロケット2台〜3台 = 約200〜300億円※機種、打上げ重量に依存~
合計:575〜675億円~
*1 ref. Soyuz Spacecraft To Cost NASA 65 Million (PhysOrg.com) 他
§ **シャトルもISSもいない宇宙
最近、どうもスペースシャトルの旗色が悪い。「高くて、無駄が多くて、安全性に問題がある失敗作」これが今のシャトルへの評価だ。なにしろ、NASA自身がそういっているんだから、これはちょっと否定のしようがない。でも、アポロプロジェクトの終了と共に生まれ、夢の次世代機としてシャトルの初打上げに心躍らせ、2回の事故に胸を痛めてきた「スペースシャトルファン」としては、これはちょっと寂しい。30年近く、100回を超えるミッションで使われてきた機体を、欠陥品のひとことで切り捨てていいものだろうか?いくら何でもそれはもったいないんじゃないかな。
確かに、シャトルは欠陥機といってもいいすぎではないかもしれない。でも一方で「あんなにお金ばっかりかかって危険な代物、無かったほうがよかった」という言葉にはちょっと頭を傾げてしまう。もしスペースシャトルがなかったら世界の宇宙開発はもっとうまくいっていたはずだ、という仮定は楽しいけれど意味がない。もちろんその可能性はあるけれど、でも同じくらいもっと寂しいものになっていた可能性だってある。
スペースシャトルは、7人の宇宙飛行士と、28tものペイロードを同時に打ち上げられて、軌道上での実験や組立などのプラットフォームとしての役割も果たす。今のところこんな打上げ機は他にない。この能力を他の打上げ機で代替するのは結構大変だ。NASAの次世代機やロシアのKliper、まだ見ぬ「日本独自の有人宇宙船」がこの能力を持てるとは限らない。そして、これらの宇宙船が本当に飛び始めるころには、スペースシャトルは既に退役し、ISSも軌道にない。
いまさら、シャトル不要論に異論はない。もう十分すぎるほどに使ったし、そろそろ新しいのを作ってもいい頃だ。でも、僕が聞きたいのはその先なのだ。僕はシャトルとISSは、それでもそれなりの実績を残したプロジェクトだったと思う。本来なら、その評価をきっちりした上で「シャトルとISS抜きの有人宇宙開発」という画を描かなくちゃいけないはずだ。でも、アメリカは「月へ行くぜ」としかいわない。本当に他のことは何もしないつもりなのか?そしてJAXAもESAもロシアもISSがあることを前提とした計画しか発表していない。
シャトルが退役するのは2010年、ISSの退役は2016年、もうさほど時間は残っていない。僕たちは本当にその準備ができているんだろうか?僕はちょっと不安だ。
シャトルでは自由に移動して船外活動が出来る!のが利点なので<br>シャトルが無ければHSTの改修も出来なかったですね。
そう、ISSも作れません。荷物を運ぶコストをアリアンと、人を運ぶコストをソユーズと比べて、高コストだと批判するのは、ちょっとおかしい気がするんです。シャトルは両方を一度にできるというメリットがある。そこはもう少し評価してもいいと思うんですよね。<br>いや、そんなやり方は必要ないんだ、ということなら、何か別のやり方を考えなくちゃいけません。スペースシャトルとISSでやってきたことが、できなくなるかもしれない、というのはなかなか憂慮すべき事態だと思うんですけどね。どーするつもりなんだろう?
実験のプラットフォームという役割は全てISSにまかす、人の移動はソユーズで、物資はプログレスでというのがすごく効率が良いのではないでしょうか?<br>当然建設とか修理の問題は残るわけですが、HSTでもロボットによる修理が一時議論されましたが、本来は半端に人の手による建設や修理ではなく、無人(ロボット)による技術を高めたり、ISSから軌道面変更可能な有人機を開発するなどが正しい方向の宇宙開発であったと思っています。<br>フェラーリのようなスピードの車に、リムジンのような快適性を加え、ミニバンのように多くの人を乗せ、かつトラックのように沢山の積載物を乗せることが可能な車を作り、運用するよりも、機能特化したそれぞれの車を効率よく開発し、機能強化(Verアップ)し続けるほうが、個々の技術は高まったと思うのです。<br>と言っても、あの有翼の機体に人が乗って打ち上げられ、そして滑走路に着陸する。 その姿だけでも感動しちゃうんですが。
でもロシアはスペースシャトル無しにミールという宇宙ステーションを使ってISS以上の成果を上げてきましたよ?<br><br>過去のことを嘆いても仕方がないとは僕も思いますが、過去を引きずらないことが肝要かと思います。ちなみにスペースシャトルを作るときには、その為に10年もの長きにわたってアメリカの有人宇宙開発はストップしました。(その間に旧ソ連はせっせと人と貨物を分けて打ち上げて、ミールを作り上げて宇宙空間長期滞在の実績等を作ったわけです)<br>シャトルが退役した後、次が間に合うのか?と言われればそりゃホント問題なのですが、しかしそろそろ国が開発しなくても良いのでは?という時代ももうそこまで来てるんですよね、有人宇宙機。
>半端に人の手による建設や修理ではなく、無人(ロボット)に機能特化したそれぞれの車を効率よく開発し、機能強化(Verアップ)し続けるほうが、個々の技術は高まった。<br>そう、僕もそう思います。そして、それをシャトルがあるうちに済ましておくべきだったんじゃないかと思うんですよ。今更ですが。JAXAのHTVやESAのATVがその端緒になってくれればいいんですが、その次の話はあまり見えてきませんね。<br>そろそろ、どうやって宇宙に行くかだけじゃなくて、あそこでこれから何をやっていくのかをまじめに考えてもいいと思うんですけどね。
>でもロシアはスペースシャトル無しにミールという宇宙ステーションを使ってISS以上の成果を上げてきましたよ? <br>確かに。「貨物と人を一度に持っていく」というやり方を止めるのであれば、もう一度ミール方式でやるということですね。そうなると、HTVやATV、Kliperなんかと一緒に使える汎用性の高い軌道モジュールが欲しいところです。また、ロシアに「ズベズダ=ミール」モジュールを作ってもらえばいいのかな(あ、HTVはドッキングできないか)。なんだかそれも、「またか」という感じですが。<br><br>>しかしそろそろ国が開発しなくても良いのでは?<br>そうそう。このままのペースで行くと「ソユーズ/Kliper」の次は民間資本のもののほうが先行してしまいそうですね。そっちを全力でバックアップする、というやり方もあるような気がします。<br>なんだかISSにこだわるようですが、実は、個人的にISSのもう一つの使い道は民間宇宙開発のプラットフォームにすることなんじゃないかと思っているんです。テスト段階でそばで人が見ていられるというのは、新しい技術を開発する上ではかなりのアドバンテージだと思うんですよね。国家資本で培った技術を民間移転するつもりがあるなら、ISSにはまだ使い道があるはずなんです。いや、まあ新しいのを作ったっていいんですけど、せっかくもうあるんだし。
シャトルの再評価をアチコチでみますが、皆さん「行き」の話ばかりで「帰り」の話をされていませんね。<br>エアロックを通らないサイズの物を回収できる船は必要ないのでしょうか?
>エアロックを通らないサイズの物を回収できる船<br>なるほど。確かにそれも「シャトルでしかできないこと」の一つですね。SFU(http://www.isas.ac.jp/j/enterp/missions/complate/sfu.shtml)みたいなミッションもできなくなるのか...むむむ。
先日はレスありがとうございました。<br><br> 失敗学によると失敗には「良い失敗」と「悪い失敗」があ<br>るそうです。「良い失敗」の例はアメリカのタコマ橋で、そ<br>れがあったからこそ巨大な吊橋が作れるようになったそうで<br>す(思えば白川教授や田中耕一氏の業績も元は"失敗"か<br>ら)。「悪い失敗」は「失敗するであろう事が十分予測でき<br>たはずなのにやって失敗し、かつその失敗を無かった事にし<br>てしまう(教訓にしない)」だそうです。<br><br> スペースシャトルが「失敗」だったとして、それは「良い<br>失敗」と「悪い失敗」のどちらなのでしょうか。
>先日はレスありがとうございました。 <br>いえ、こちらこそ書き込みありがとうございます。<br><br>>スペースシャトルが「失敗」だったとして、それは「良い<br>>失敗」と「悪い失敗」のどちらなのでしょうか。<br>どうなんでしょう。まだ終わっていないプロジェクトですから、今の段階で判断するのは難しいかもしれませんね。それに、「良い失敗」というラベルをつけたとたんに、そのプロジェクトの良い部分/良い影響だけが目につくでしょうし、「悪い失敗」なら悪い影響が見えてくるでしょう。どちらかに評価を固めてしまうのは、あまり得策じゃない気もします。<br>スペースシャトルは、当初目標としていた安価で信頼性の高い軌道往還機という理想から比べれば、あきらかに「失敗作」かもしれません(良いか悪いかはまだわかりませんが)。でも、個人的には、少なくとも失敗作のひと言で切り捨ててしまうのがもったいないくらいには、シャトルは悪くない成果を上げていると思います。
またお邪魔します。<br><br> 今日の新聞にスペースシャトル後継のロケットの名前が<br>「アレス」に決定したと載っていました。アレス・・・ギリシ<br>ア神話の軍神の名前ですが、その戦いは例えばアテナのよう<br>な「何かを守るための戦い」ではなく「戦いのための戦い」<br>なのが引っかかります。ちなみにシャトルタイプではなくア<br>ポロに似たカプセル型だそうです。<br><br> そういえばロッキード社に発注されていた次世代シャトル<br>は確かぽしゃったように記憶しています。宇宙開発は技術的<br>問題以上に「予算獲得」といった政治的問題が大きいのかも<br>知れません。
ちょうど今読んでいる火星SF(Stephen Baxter "Voyage")で火星に始めて着陸するが「アレス」なので、予言的中か?とも思いましたが、「アレス」はギリシャ語で火星ですから、そのままと言えば、そのままのネーミングですね(ちなみに、蠍座のアンタレスはアンチ・アーレスで「火星に対抗するもの」の意味だそうです)。<br><br>X-23は燃料タンクがうまく作れずに予算/時間切れだったかな?いや、まさしく予算獲得がすべてですよ。現に、スペースシャトルも、そのためにああいう形態を取らざるを得なくなったんですから。<br>ref. コロンビア事故報告書 非公式日本語版 1-2<br>http://www.lizard-tail.com/isana/final_report/s1-2.html
>でもロシアはスペースシャトル無しにミールという宇宙ステーションを使ってISS以上の成果を上げてきましたよ?<br><br>ミールもシャトルを使ってコンピュータの入替をしたり、エア漏れの改修をしたりしてますね。<br>スペースシャトルが無くても保っていけたかもしれないけど、利用していたのも事実。