Garbage Collection


2006-06-29

§ **STS-121カウントダウン開始

STS-121の打上げまで後3日を切り、ケネディ宇宙センターではカウントダウンが始まりました。さあ、いよいよです。打上げは現地時間の7月1日15時49分、日本時間では翌2日の午前4時49分の予定です。土曜日は夜更かし?それとも日曜日に早起きでしょうか?なんにしても週末なのはありがたいですね。~

ref. NASA - Space Shuttle~

ref. STS-121 Discovery Mission Timeline : Launch Phase~

※現在日本語解説を鋭意製作中。間に合うかな?

§ **少し心配なこと

今回、NASAは外部燃料タンクから断熱材が剥離する危険性を認め、その上で乗務員の安全が保証されているから打上げを決行する、という判断を下しました。もし、ほんとうに断熱材が剥離し、シャトルを傷つけたとしたら、何が起こるんでしょうか?

NASAは断熱材の衝突が起きた場合「損傷が軽微なら修理ができる」「いざとなったらISSに避難して救援機を待てばいい」という説明をしています。でも軌道上でシャトルの機体を修理する技術はまだ実証さえ済んでいないテスト中のものです。破損の程度にもよりますが、ある大きさ以上の傷なら直すより避難する方が安全、という判断が下される可能性は高いでしょう。

さて、救援機には最低でも2人、パイロットとコマンダーが乗ることになります。シャトルの定員は7人。STS-121のクルーのうち2人はISSに残ることになります。彼らを迎えに行くためには、9月に予定されているソユーズTMA-9を救出用に転用することになります(そうなるとDice-KのISS滞在は延期/中止になりますね)。もちろん、NASAとロシアの間でそういう契約が済んでいれば/できるならの話ですが。

さて、軌道上に残されたディスカバリーはどうするんでしょうか?無人で大気圏突入-着陸することも技術的にはできなくはないのかもしれませんが、僕がフライトディレクターなら、また空中分解するかもしれない機体を危険を冒して着陸させるより、海に落として廃棄したほうがいいという判断を下すでしょうね。人口密集地に破片が落ちたりしたら大事ですから。

グリフィン長官は「もう一機失われたら、もうシャトルの打上げはやらない」と宣言しています。というわけで、救援ミッションを最後にシャトル計画は打ち切り。ISSは未完成のままで終わります。

コロンビア事故でシャトルの打上げが途絶えた時、ISSはかなり危機的な状況に立たされました。ロシアのプログレスからの補給物資だけではISSを維持するのに充分とはいえなかったからです。しばらくISSではクルーの避難が必要かもしれない、というぎりぎりの状態が続きました。でも、まだあの時はシャトルのフライトが再開するという見通しがあったんです。残念ながら、今回はその可能性はありません。そうなったらアメリカが完成のめどの立たないISSを維持し続けるという選択をするでしょうか?僕がNASAの長官なら「ISSは廃棄。シャトルの分とあわせて余った予算を次世代機に投入して一刻も早く宇宙に帰るのだ」と宣言します*1。というわけでISSも打ち切りです。

ESAのATVはソユーズやKleperとドッキングできるのでまだ使い道があるかもしれません。ドッキングする先がないJAXAのHTVはおそらく中止されるでしょう(それともKliper計画に参加表明をして、ドッキングポートをロシア規格に換装するという手が使えるかな?)。

なんだか書いていて陰鬱な気分になってきたので、これぐらいで止めておきます。まあ、99%杞憂でしょう。でも、こうやって考えると「断熱材が落ちても大丈夫」というのは、意外とリスキーな選択なのかもしれません。

ミッションの成功を、心から祈ります。

*1 これ、NASAにはかなり都合のいいシナリオだ

§ **追記

という心配をしていたら、どうやら今回のフライトで従来クルーがやっていた着陸に関する一連の操作を地上から行うための機材を積み込むとのこと。ということは、やっぱりこれまでできなかったのか。~

Shuttle Discovery to Carry New Repair, Landing Tools(Space.com)~

そして、緊急着陸地はホワイトサンズミサイル試験場(GoogleMaps)。確かにここなら陸地の上を飛ぶのは最低限で済みますからね。そういえばSTS-3はここに着陸しています。