2003-09-17
§ [book] 松浦晋也『われらの有人宇宙船―日本独自の宇宙輸送システム「ふじ」』(amazon)
日本の宇宙開発の良心がぎっちりつまった本。おすすめ。
シャトルの事故報告書の先にあるものを見通すために必要な最低限の知識が、ここには全部書かれている。
コロンビア事故の報告書を訳しながら、彼らの「私たちは間違っていたのかもしれない」という、どこか悲痛な声を聞いていると、出口の無い迷路に投げ込まれたような気分になる。僕達はここからどこへ向かって足を踏み出せばいいんだろう。
20年以上も前に、25トンものペイロードと7人の宇宙飛行士を軌道上まで打ち上げる能力をもった宇宙船を創り上げたのは、まさしく偉業といっていいと思う。いまだかつて、こんな能力を持った宇宙船は存在したことがない。いや確かに、設計はタコだったかもしれないさ、運用はへぼだったかもしれないさ、組織は腐っていたかもしれないさ、でもこの20年間、あれを飛ばしてきたのは、本当に凄いことだよ。
その宇宙船を作り、飛ばしてきた彼らが、「私たちは間違っていたのかもしれない」とつぶやいている。あの事故は、夢と希望が妥協と打算にまみれていく姿を見ないように、後ろ向きのまま全力疾走した結果なんだ。夢と希望はいつも僕たちの前にあるとは限らない。もしかしたら、僕たちは後ろを向いているのかもしれない。
では、本当に前を見るために、僕達が考えなきゃいけないことはなんなのか?この本は、そのためのヒントを見せてくれる。そう、夢や希望じゃロケットは飛ばないけれど、ロケットは夢や希望を乗せて飛ぶ。これは、きちんと前を向いた、もうひとつの夢の形だ。
§ [final_report] コロンビア事故最終報告書 翻訳日記
『 1.1 Genesis of the Space Transportation System 』 終了