Garbage Collection


2009-04-16

§ [clip] NASA - Station Module Named 'Tranquility' to Honor Apollo 11

ISSに設置されているNode3に"Tranquility"という名前が付けられた、というお話。

Node3 - "Tranquility" (NASA)

Node3は2010年にISSに接続される予定のモジュール。リサイクル型の排水処理装置や空気活性化装置など最新型の生命維持システムを備え、またドッキングハッチやキューポラと呼ばれる観測用窓も設置されます。この名前は公募で選ばれたもので、人類初の月面着陸が行われた「静かの海(Sea of Tranquility)」にちなんだものです。

さて、この名前が初めて発表されたのは、NASAのカンファレンスではなく、アメリカの人気コメディ番組 "The Colbert Report"の番組内のことでした。なぜこんなことになったかというと...

その騒動は、"The Colbert Report"のホスト、スティーブン・コルベアのこんなジョークから始まりました。「"Serenity"なんてつまらない名前止めて、僕の名前を付ければいいのに」。投票はNASAは事前に選んだ4つの案、"Earthrise"、"Legacy"、"Serenity"、"Venture"から選ぶというものでしたが、それ以外にも自分の好きな名前を回答できる欄がありました。そう、この自由回答が「Colbert」の名前であふれたんです。

結果は、23万票を集めてNASAが選んだ4案も軽く押さえ、ぶっちぎりのトップ。さて、国際宇宙ステーションのモジュールにコメディアンの名前がつくのか?それともNASAは無視を決め込むのか。ネット中がワクテカしながら見守る中、NASAは突然こんな発表をしました。

「Node3の新しい名前はColbert Reportの番組内で発表します」えぇええええ?!

じつは、このコルベア氏はこの手の命名コンテスト荒らしの常連。サンフランシスコ動物園の鷹、ホッケーチームのマスコット、アイスクリームのフレーバー、新種の蜘蛛などに彼や彼の番組にちなんだ名前が付けられているそうな。他にもヴァージンアメリカが所有する機体にはAir Colbertという名前のついたエアバス機があり、ハンガリーのある橋にも危うくColbertという名前が付けられそうになりました。この時は別の名前がつけられましたが、ハンガリーの大使がThe Colbert Reportの番組中で出演して釈明をしたとか。NASAもその轍を踏むのか?

当日の番組、コルベア氏はうきうきです。

「国民の皆さん、僕は今凄くどきどきしてます。まるでお菓子屋さんにつれてこられた子供みたいに。だって今日、僕の名前が宇宙ステーションのモジュールに付くんですからね!さあ、だんだん宇宙気分が盛り上がってきましたよ。僕は、ここに来る前に咳止めシロップを飲んできたので、まるでふわふわ浮かんでるみたいな気分です」

そこへ登場した宇宙飛行士のスニータ・ウィリアムズが口にした名前は"Tranquility"。選ばれたのは、最も票を集めた"Colbert"ではなく、NASAが挙げた候補で一番票を集めた"Serenity"でもありませんでした。まあ、月面着陸40周年にふさわしい良い名前といえば良い名前ですが...

当然会場はブーイング。コルベア氏はがっかり。でも彼女の話には続きが...

「...ちょっと待って、ちょっと待って、でもあなたの名前は宇宙にいくことになるのよ、ノード3のとても重要な装置と一緒に」~

「え?僕の名前が宇宙に?まじで?」~

「そう、COLBERT - Combined Operational Load Bearing External Resistance Treadmill」

COLBERT 公式パッチ(NASA)

これは、要するにランニングマシーン*1。宇宙飛行士が無重力環境での体力低下や骨のカルシウム分の流出を防ぐために行うトレーニングに使われるものです。直訳するなら「複合負荷耐久外部抵抗運動器具」という感じでしょうか。それっぽい単語が並んでいるだけで、ほとんど意味はありません。おそらくなんでも略称にするNASAのセルフパロディですね。

彼女からこのことを聞かされたコルベア氏の言。

「いや、ノード3よりランニングマシーンの方がずっといいよ。だって、ノード3はランニングマシーンの入れ物じゃないか。"僕、ママにナイキのシューズの箱をもらったんだ”なんて誰もいわないだろ?みんながほしがるのは中身なんだよ!」

NASAの宇宙開発部門の長、ガーステンマイスナー氏はこの命名に関して次のようなコメントをしています。

「私達は通常、アメリカの宇宙ステーションの機材に存命中の人物の名前をつけることはありませんし、これには例外はありません。しかし、NASAは新しい宇宙ステーションのランニングマシーンを"Combined Operational Load Bearing External Resistance Treadmill"と名づけました― つまり "COLBERT"です」

どうやら、あくまでトレーニング機器の頭文字で人名じゃないよ、ということのようです。彼はCOLBERTが搭載されたシャトルの打ち上げに招待され、もちろんこのランニングマシーンを試す機会を与えられるとのこと。NASA GJ!!!

ref. YouTube - Space Marathoner Suni Williams Announces New Space Station Treadmill Name on the "Colbert Report"

*1 国際宇宙ステーションに滞在中にこれと同じようなランニングマシーンでボストンマラソンに参加したスニータ・ウィリアムズが名前を発表してるあたりが粋ですねえ

本日のツッコミ(全2件) [ツッコミを入れる]
> Spark (2009-04-22 10:56)

日本で似たような事をしようと思ったら、<br>宇宙研系の衛星の名前を全国銘酒品評会で、<br>例のラベルパロディと共に発表<br>ですかねぇ

> isana (2009-04-27 15:44)

「性能計算書」ですね。ただ、最近はそういう遊び心も忘れられつつある、と聞きました。さみしい限り。<br>あんまりふざけると怒られるのかなあ、そういう余裕って大事だと思うんですけどね。