Garbage Collection

§ *[clip] BBC NEWS | Science/Nature | Space bugs become more dangerous

宇宙へ持っていったサルモネラ菌が、地上のものよりも毒性が高くなった、というお話。えぇーっ！

無重力が生物に与える影響を調べる研究は山ほど行われているけれど、生物の基本的な機能に変化が起きたという話はあまり聞かない。人間は体内の血流量の分布やカルシウムなどの量が変化するけれど、体調が変化するぐらいで、基本的な機能が損なわれたり強化されたりはしない。カエルもメダカも普通に子供を産み、親にも子供にも特に異常は見られなかった。

でも、Center for Infectious Diseases and VaccinologyのCheryl Nickerson博士を中心とするグループが、2006年9月に行われたSTS-115のフライトで行った実験によると、宇宙飛行を経験したサルモネラ菌は、地上に留まっていたものに比べて3倍もの毒性を持っていたそうな。どうやらこれは、一部の遺伝子ないしその発現の仕方に変異が起きたためで、Hfqというタンパク質に関連するものらしい。~

ref. The Biodesign Institute: Space flight shown to alter ability of bacteria to cause disease(Arizona State University)

この研究結果は、長期の宇宙飛行では感染症のリスクが増大する、という危険性を示しているだけじゃなくて、無重力がバクテリアの毒性に影響を与えるメカニズムが分かれば、全く新しい感染症の予防法が生まれる可能性を示唆するもの。これはすごい！

っていうか、無重力が遺伝子レベルでバクテリアに影響を与える、というだけでかなり驚き。バクテリアの遺伝子が影響を受けるということは、人間や他の高等生物の遺伝子も影響を受ける可能性があるということだろうか？だとしたら、ちょっと怖いねぇ。

(追記:見落としてました、ありがとうdtomonoさん)~

実験は、ケネディ宇宙センターに特別なシミュレーションルームを作り、シャトルと地上との間で温度や湿度などの環境をリアルタイムに完全にシンクロさせておこなわれたそうな。すげー！

§ ***(追記)

宇宙線の影響では？という指摘があったので、もう少し調べてみました。

どうやら、このSTS-115で行われた実験は、そもそも地上での実験を追試するためのもののようです。2002年に出されたNickerson博士の研究を紹介するNASAのリリースに以下のようにありました。

In the course of their investigation, Nickerson and her colleagues found that more than 100 salmonella genes, or about 3 percent of the salmonella genome, altered genetic expression. The changes made the bacteria far more lethal: mice injected with the strains grown in modeled microgravity died, on average, three days earlier than expected, from shock and from large-organ failure.

ref. NASA - Experiments May Lead to Ways of Neutralizing Virulent Microbes

これは「地上で擬似的な無重力環境を作って行った実験でサルモネラ菌の毒性が強くなった」というもの。今回のリリースは、これを本当に宇宙と地上で対照実験をやってみたら、やっぱり同じような結果になった、ということのようです。