2007-09-25
§ *[clip] 【レポート】「はやぶさ2」が危ない? 小惑星探査機の後継機、海外で打上げか | ホビー | マイコミジャーナル
はやぶさ2に対してJAXAから「国際協力により外国のロケットで打ち上げることを前提として検討するように」という指示が出ている、というお話。どうやら、「はやぶさ2をやるなら、国際共同という形にして、どこかの国に観測データとロハで探査機を打ち上げてもらいなさい」ということみたい。ありゃ。
でも逆に考えれば、これは「打ち上げ費用は出せないけれど、探査機の開発ならどうにかなるかも」ということなんじゃないだろうか。はやぶさ2は、初期予算5億を申請して、かろうじて5000万だけ予算がついた。これは実現の可能性を探るための予算で、開発に入れるようなものではない。でも、そこから決して高くはないにしても実現の可能性が見えてきた、というのは決して悪いばかりのニュースじゃない。かなり厳しい道ではあるけれど、はやぶさ2が実現する可能性はまだ十分残っているということだよ。
個人的には、国家政策として他国に先んじることより、サイエンスとしての価値を重視すべきだと思っているので、はやぶさ2が国際共同プロジェクトになることは決して悪いことだとは思わない。むしろ、将来的な協力関係を築けるのなら積極的にその道を模索したっていいし、もし可能ならNASAのOSIRISに技術供与して日本人が観測データへアクセスできるようにしたっていいと思う。
ただでさえ、小惑星に探査機飛ばすチャンスなんて限られているんだから、少しでも沢山のデータを少しでも多くの研究者に渡してあげるほうがずっと「楽しい」と思うんだけど...
§ *[clip] 実現の瀬戸際に立つ「はやぶさ2」 - ビジネススタイル - nikkei BPnet
と書いた矢先に、こんな記事が...
昨年末に行われた、今年度予算折衝で、「はやぶさ2」は着手のために5億円を要求した。折衝の席上、財務省や文部科学省の側からJAXAに対して、「数億円なりつけるべきではないか」という発言があったが、JAXAはそれを退け、結果は5000万円となった。予算を出す側が、「予算をつけようか」と言ったのに対して、JAXAは「いらない」と答えたのである。
ここだけ読むと文部省側が「追加予算を出すよ」といったのにJAXAが断った、という話のように読める。問題はなぜ断ったかだけれど、この記事の中ではそれは明らかになっていない。
ちなみに、この件ついては、以前松浦晋也氏のBlogにもう少し詳しい経緯が掲載されていた。~
ref. 松浦晋也のL/D: 「はやぶさ2」その1:来年度予算折衝の結果
邪推ついでに、JAXAが予算化を断った理由を考えてみよう*1。
この件関しては、ついはやぶさプロジェクトを中心にして関係各所の動向を見てしまいがちになるけれど、よく考えると、はやぶさ2はちょっと無理のある進め方をしているようにも思える。
宇宙科学については「はやぶさ」だけではなく、他にも様々なミッションが予定されている。それらは、ある程度時間をかけてサイエンスミッションとしての意義や実現の可能性などを検討して、予算や実施のタイミングが配分されているはず。
そこへ、前回のミッションの評価が済んでおらず、実現性やサイエンスの評価が済んでいないミッションにいきなり数億の予算をつける、というのはちょっと虫のいい話かもしれない。なにしろ、数億円の予算をつけるということは、実際の開発がスタートするということだから、その先に百数十億円の予算がつくことが前提になる。たとえば、フィージビリティスタディを飛ばしていきなり億単位の予算をつけて開発に入る、というのは研究開発の常識から言ってもちょっとありえないんじゃないだろうか?
限られた予算を有効に使うためには、それぞれのミッションの評価をきっちりした上で、必要な予算を適切なタイミングで配分する、ということに尽きる。具体的には、計画案・予備調査・設計案...と徐々に具体化しながらそのつど評価をしながら継続の可否を検討する、というやり方。まどろっこしいやり方だけれど、完全に余剰のお金でもない限り、こうする以外に確実な方法はない。
これまでの経緯を読む限り、はやぶさ2に関する予算案はこのプロセスをへているようには見えない。応援している身としては、ルールを破るだけの価値があると信じたいところだけれど、サイエンスミッションの優先順位は「人気」だけで決まるものじゃない。
もし JAXAのヘッドクオーターがはやぶさ2に対して「まだ実現の可能性やミッションとしての重要性がはっきりしていない」と判断しているとすれば、予算化を断ったのも理解できるような気もする。
*1 あくまで外へ漏れ聞こえてくる情報からの「邪推」なので、くれぐれも誤解なきよう。