2007-06-15
§ *[sts117] ISSの姿勢制御コンピューターのトラブル続報
前回の記事から、状況が二転三転しているので、ちょっとまとめておきましょう。ことの経緯はこんな感じ。
火曜日に突然、ロシアモジュールの3台の「指令/制御コンピュータ」(command-and-control computer)が全て停止。水曜日に、この3台の「指令/制御コンピュータ」とあわせて、3台の「航法用コンピューター」(navigation Computer)も一緒に再起動しようとしたら、航法用コンピューターも全て停止。木曜日に、停止した6台のうち、指令/制御コンピュータを2台、航法用コンピューターを1台再起動したけれど、やっぱり問題が起きて数時間後にまた停止(どうやら、今回は調査のためにわざと止めたみたい)。
姿勢制御用のジャイロだけは、ロシアのコンピューターを迂回して、US側のモジュールでコントロールするようにしたけれど、スラスターが使えない。ISSのいる高度300km付近はまだわずかに空気があって、抵抗で高度が落ちていく。そのためにスラスターを使って時々高度を上げてあげなくちゃいけない。また、姿勢制御用のジャイロの許容量を超えた姿勢制御にもスラスターがいる(ジャイロでの姿勢制御はジャイロの回転速度を上げたり下げたりすることで行う。でも、ジャイロの回転速度には限界があるので、時々機体の姿勢を変えずに回転速度だけを調整する必要がある。このときにスラスターが必要になる)。
さて、STS-117がドッキングしているうちはシャトルのスラスターが使えるけれど、彼らが帰ってしまうとISSには高度を上げるための手段がなくなってしまう。最悪の場合、ISS存亡の危機ということにもなりかねない。コンピューターの復帰が不可能な場合は、3人の長期滞在クルーをISSから退去させる、とのこと(高度のコントロールがされないと、たぶんISSは数週間で落ちてくる。これは実質ISSの廃棄宣言になるのでは?)。
今のところ原因ははっきり分かっていないけれど、S3/S4トラスを取り付けたことで電源が不安定になってノイズが出ているんじゃないか、とのこと。運用チームは、コンピューターの復帰させる努力を続けつつ、他の手段でISSの高度をコントロールすることも検討している(たとえば、貨物船プログレスのスラスターを使う、とか)、らしい。
ref.NASA urges patience as Russians work on computer glitches (Spaceflight Now)
原因が分かれば対処の方法も分かるはず。そんなに大げさなことにはならないんじゃないかと思うんだけど...
(追記)~
金曜日の早朝に行われた、新しく接続した太陽電池から直接ロシアモジュールへ電源を供給する回路を切った状態での起動テストもうまくいかなかったそうな。これは、新しい太陽電池が原因ではないか、あるいは何らかの間接的な影響によるものだということですね。~
ref.Russian computers shut down again for more troubleshooting(Spaceflight Now)