2007-01-16
§ **[clip] Metric Moon(Science@NASA)
NASAが月開発でメートル法を採用、というお話。えぇ!ほんとに?
アメリカは世界中でこれだけメートル・キログラム法が浸透した世の中にあって、未だにポンドとインチでロケットを打ち上げているという世にも珍しい国だったんだけれど、現在推進されている月への着陸を目標とした新しい宇宙開発計画では積極的にメートル法を採用することになったらしい。わぉ!そりゃめでたい!
1999年にはこの単位の混在が原因で火星探査機マーズ・クライメット・オービターが所定の軌道に乗れずにミッションが失敗していたりする。そういえば国際宇宙ステーションに接続されるESAのコロンバスモジュール作るときも、ケーブルを接続するプラグの規格が国際標準と違うといって作業が遅れていたっけ。きっと、見えないところで大勢のエンジニアが何度も頭を抱えていたに違いない。気づかないようなマイナーなトラブルも山ほどあるんじゃないだろうか。
実は、表向きはNASAは1990年からメートル法を使っていたんだけど、契約業者が未だにポンドとインチで製造を行っていたために、内部でメートルとマイル・インチが混在していたということみたい。ということは、今回はコンストラクターにもメートル法を徹底させますよ、ということなのかな?だとすれば、これは画期的なことじゃなかろうか。
§ **[clip] ルナーA計画:宇宙開発委に中止を報告 JAXA(Mainich-MSN)
LUNA-Aは月面に探査プローブ(ペネトレーター)を打ち込んで、月の内部組成を観測することを主目的とした探査機。1991年に開発が始まり、当初は1995年に打ち上げを予定していたけれど、ペネトレーターの開発が遅れに遅れていた。
ペネトレーターの開発が難しかったのは、月面に打ち込まれたときの衝撃に計測器が耐えなくちゃいけないこと。なにしろ、ミサイルにセンサーとコンピューターを載せて、地面に向けて打ち込むみたいなもの。搭載機器は1万Gの加速度に耐えなくちゃいけない。普通に考えれば計測器が生きているほうが不思議だよ。
一方、探査機本体のほうは、まあこれまで培った技術があるから開発は難しくない。推進剤/スラスターのリコール騒ぎなんかがあったものの、ペネトレーターより先に先に出来上がって倉庫にしまわれることになった。最初はM-V2号機で打ち上げられるはずだったけれど当然先送りになり、M-V 2号機は1段目と3段目が6号機に転用、2段目は廃棄された。そのまま打ち上げの目処さえ立たないまま、ペネトレーターの開発を続けるという状態が続いていたけれど、最近になってようやく実験に成功。おぉ!これはいけるか!と思っていたんだけど、どうやら倉庫の中で探査機本体がだめになっていたらしい。しょんぼり。
うーん、なんだか最悪の幕切れだ。「見通しが甘かった、反省している」というJAXAのコメントが出ているけれど、プロジェクトに対するレビューがどんな風に行われていたのかが知りたいところ。見通しの甘さは問題だけれど、その甘い見通しを見抜けなかった、あるいは見抜いていたのに対策が取れなかったのは、JAXA全体のマネジメント能力にかなり致命的な問題があるってことじゃないかな?誤解を恐れずにいえば、ロケットの打ち上げに失敗するよりよっぽどたちが悪いと思うよ。
ともあれ、ペネトレーターは海外のプロジェクトも視野に入れつつ別の衛星へ乗せることを検討、探査機本体は国産新型ロケットの試験1号機の性能確認に活用する、ということらしい(要するに、GXか新型固体ロケットに試験用のペイロードとして搭載ということかな)。マネジメント面はもちろんのこと、知識や技術、人材の面でも、プロジェクトの成果を少しでも次に活かしてほしい。いや、本当に。