2006-07-28
§ **[clip] GAO: NASA's Current Acquisition Strategy for the CEV Places the Project at Risk of Significant Cost Overruns, Schedule Delays, and Performance Shortfall(SpaceRef)
米国会計検査院が発表したNASAのポストシャトルの有人宇宙計画に関する評価。曰く「予算はオーバーしそう、スケジュールは伸びそう、性能も要求を満たさないものになるかも」大雑把にまとめると、まだあまりに不確定要素が多いのに、コストやスケジュールが楽観的過ぎるんじゃないか?という指摘。
指摘されている問題点は、こんな感じ。
「なんだか、開発に必要な金額が予算を上回っている年があるけど大丈夫?他の年の余剰を回すって言っているけど、スケジュールが遅れたり予算が超過したらどうするの?それはちょっと余裕がなさすぎなんじゃない?」~
「それに、設計や技術仕様、コストなんかがはっきりする前に、コンストラクターと長期契約を結ぶっていうのはどういうこと?それって仕様の変更やスケジュールの遅れが出るんじゃないの?」~
これに対してNASAからは「きちんと予測を立てた上でコストを見積もっているから大丈夫だよ」との回答があったけれど、GAOはさらに再反論しています。~
「だって、当初の計画からもう何度もプランが変更されているじゃないか」
これに対する対応策としては、NASAには「もう一度ちゃんと予算の範囲内でやるべきことと出来ることを考えたほうがいいよ」という提案が、そして政府に対しては「設計段階での評価が終るまでは当該予算を制限したほうがいいんじゃない」という提案がされています。
わはは、コテンパンですね。このプロジェクトは素人目に見てもスケジュールとコストの見積もりが大雑把過ぎましたから、いつかツッコミが入るだろうと思ってましたが、案の定あちこちから「見直せ」という声が上がっているようです。
ref. NASA予算案を読んでみる(Junkyard Review)
§ **[clip] Unaffordable and Unsustainable: NASA's Failing Earth-to-orbit Transportation Strategy - A Policy White Paper of the Space Frontier Foundation(SpaceRef)
ほぼ同時期に民間団体からも批判が出てますね。これは、民間宇宙開発を促進する目的で設立された"Space Frontier Foundation"も、NASAが現在進めている有人宇宙計画は「無理が多く、持続性も無い」とするホワイトペーパーを発表した、というお話。GAOのレポートと同じく「今のままじゃ、スケジュール的にも予算的にも絶対続かないよ」、ということみたい。
彼らが提示している対案はこんな感じ。
「大統領のステートメントには、"経済、国家安全保障の面での利益を最大化するように計画しろ"と書いてあるのに、NASAは既存のコンストラクタとばっかり仕事をして、ちっとも経済の活性化に寄与してない。政府はもっと民間企業にお金を落とすことを考えてよ。ファンドを作るとか、賞を設立するとか、税金を優遇するとか、色々あるでしょ?」~
「それから、新しい有人機だけど、あれちょっと大げさすぎるよ。コストも時間もリスクもちょっと高すぎるよね。既存のAtlasVとかDeltaIVを使うプランをもう一度検討してみるべきだよ」~
「それに、ISSが退役する前に新機種を投入するのは無理がある。ISSに使うのをあきらめれば予算的にもスケジュール的にも余裕が出るよね。地球周回軌道のことは民間企業に任せて、NASAはそれを買えばいいよ。むしろNASAは最初から月を目指す、でいいんじゃない?」
まあ、要するに「もっと僕らにやらせてくれ」ということみたい。いいたいことはよく分かるし、ありえないとは思わないけれど、上のGAOの報告書を読んだ後だと、ちょっと見劣りがしますね。この文書には「NASAにはできないけど、民間企業ならできる」という肝心の主張を裏付けるものが何も提示されていません。現状分析の部分も要するに「無理」と書いてあるだけ。具体的な数字もなければ、プランも無い。ただ、僕たちにもっと仕事を、もっとお金を、もっと優遇をと書いてあるだけ。さすがにちょっと虫が良すぎる感じ。提案書としては弱い気がする。