Garbage Collection


2005-08-01

§ [sts] Countdown for STS-114 post-launch events

7日目。今日は第2回目の船外活動EVAが行われます。開始予定時刻は日本時間17時13分の予定。終了は22時53分です。5時間30分以上の長丁場。がんばってください。

今日行われるのは、故障しているISSのコントロール・モーメント・ジャイロの交換です。えー、解説しましょうか。

§ コントロール・モーメント・ジャイロ

このコントロール・モーメント・ジャイロ(Control Moment Gyros: CMG)というのは、国際宇宙ステーションが姿勢制御を行う上で非常に重要な機能を果たすパーツです。小さな衛星なんかだとリアクション・ホイールと言ったりします。「ジャイロ効果」というのはご存知でしょうか。「回転する物体は常にその向きと回転数を保とうとする」という効果のこと*1です。こまがなかなか倒れないのと同じ理由ですね。このCMGというのは、この「こまがなかなか倒れない」という効果を使って衛星の向きを変えるシステムなんです。

ちょっと、ジャイロの軸を両手で持っているところを想像してみてください。そうそう、軌道上は無重量なのを忘れずに。回転しているジャイロは、その傾きを一定に保とうとしますから、無理矢理傾けようとすれば持っている自分のほうが反対方向に回ってしまいます。また、同じようにジャイロは回転数を一定に保とうとしますから、ブレーキをかけたり回転数を上げたりすると、向こうか手前に体が回ってしまうでしょう。

「軌道制御」なんていうと、小さなロケットを「ぶしゅっ」と吹かす所を想像するかもしれませんが、向きを変えるためだけにそんなことを毎回やっていたんじゃ燃料がいくらあっても足りません。そこで、大きなジャイロを回しておいて、それを傾けたり、ブレーキをかけたりして、その反動を使って宇宙ステーションの姿勢を変えるんです。CMGがものすごく重要なパーツだと言うのがお分かりいただけたでしょうか? 何しろ全部壊れると宇宙ステーションの向きが変えられませんからね。

ISSのジャイロは4つありますが、2002年6月からそのうちのひとつCMG1がずーっと壊れたままです。CMG2は回路遮断機の故障で今年の頭に止められ、先日の第1回EVAで補修されています。CMG3はずっとベアリングの調子が悪く、先日のSTS-114とのドッキング以来異音が発生しているなんていう話もあります。まともに動いているのは一つだけ。ISSの軌道を安定させるには最低でも2つ必要なので、かなりの綱渡り状態ですね。第2回EVAでは2002年に壊れたCMG1の交換が行われます。

CSGに関するより詳しい情報は、プレスキット (JAXA)のP84を、第2回EVAについては同P42を参照してください(via Space Fighter Now)

*1 少し不思議な感じですが、ただの慣性の法則です

§ Astronomers at Palomar Observatory Discover a 10th Planet Beyond Pluto (CalTech)

冥王星よりも大きな天体が発見され、すわ「第10番惑星か」という話になっているみたい。上は発見者のブラウン博士のサイト。この人は、前回惑星か?と騒がれたセドナの発見者でもある。

んー、冥王星でさえ、「本当のこというと惑星にしときたくないんだけど、まあこれまでのこともあるし、とりあえず惑星にしときますか」と言う感じで、仕方なく惑星認定されているぐらいなので、この天体は「大きな小惑星」ということになるんじゃないかな? たぶん見つかっていないだけで、カイパーベルト内には冥王星より大きな天体はごろごろしているはずだから、いちいち惑星認定しているときりがないよ。

と、ありきたりなコメントで済ませたいところだけれど...実は、本人も「セドナが10番目の惑星か」と騒がれたときに、「ちがうよー、それいい始めれば、冥王星だって惑星じゃないよ」とコメントしていたりするのだ。今回は逆に「冥王星が惑星だって言うなら、僕が見つけた天体だって惑星じゃないの?」といっている。このおっさん、絶対確信犯だよ。新惑星に娘と同じ名前つけたりしてるし。

ほら、本人だってそういってるじゃないか。

Thus, we declare that the new object, with a size larger than Pluto is indeed a planet. A cultural planet, a historical planet. I will not argue that it is a scientific planet, because there is no good scientific definition which fits our solar system and our culture, and I have decided to let culture win this one. We scientists can continue our debates, but I hope we are generally ignored.
というわけで、僕たちはこの冥王星よりも大きな天体を惑星だと宣言することにしたんだ。文化的、歴史的な意味で惑星だってね。でも、科学的な意味で惑星だとは僕らも思わない。だって、僕たちの文化と太陽系の両方にぴったり来る「科学的な惑星の定義」なんてどこにもないんだからね。で、今回は「文化」の方を優先させてみたってわけ。またぞろ僕たち科学者は議論をすると思うけど、できればみんなにはあまり相手にしないで欲しいな。

前回セドナのときにみんなが大騒ぎしたもんだから、からかってるだけだって。このニュースはニヤニヤ笑いながら見るのが正解だと思う。

*

彼がセドナの発見者であることに触れた新聞記事は殆どなかった。記事を書く前に、ほんの少し検索するだけで、彼がこれまでにどんな発見をしていて、そもそも発見者自身がこの天体を本気で惑星だと思っているかどうか調べられるのに、何でその手間を惜しむかなぁ。