2003-05-01
AIの研究が禁止されている近未来。科学者アーノルドによって造られた、自我を持つ美少女アンドロイドマギーが、人々との交流を通じて成長していく。というお話。
浅い。とにかく浅い。
物語の構造的には、おおむね「喪失物語」なんだけど。読者は喪失の理由も、喪失したものもぜんぶあらかじめ知っている。知らないのは主人公だけ。喪失に関わる謎解きの要素は一切ない。じゃあ、回復のために何らかの「闘争」があるかというと、これもない。他人からぽんと蓋を開けられるだけ。こんなの「喪失物語」じゃないよ。ただ、ストーリーが停滞しただけやんか。ちょっと工夫するだけで面白くなりそうな設定や、伏線になりそうな描写が山のようにあるのに、全部ボロボロ捨てるんだもんなあ。
主人公のアーノルドのキャラクターもシーンの都合のいいようにころころころころ変わるせいで、感情移入も出来なければ、反発も出来ない。アーノルドの行動原理は、最後までよく分からない。『美少女萌え』『親父なんか嫌いだ』『ただのメカオタク』・・・。サブキャラクターも、出てくる人出てくる人、みんな凄く浅ーいところで喜んだり悲しんだりしている。肝心のAI禁止法も「捕まったら分解されてしまう」というマギーの台詞の上にしか出てこない。誰も捕まらないし、アンドロイドだからといって、排斥されるシーンもほとんどない(実質的には、ワンシーンだけだよね)。
主人公が作った美少女アンドロイド、マギーのキャラクターが読者に媚びまくった設定になっているせいで、受けがいいのかもしれないけれど、なんでこんなものがキャンベル賞を取るんだ?浅い。浅いぞ。ぐおー。
とはいえ、最後まで読んでしまったのは、端々の描写がそれなりに面白いから。アンドロイドからみた世界、というのがそれなりに描かれている。フレーム問題とか、メモリに蓄えられた記憶とか、電源が足りない!とか、セックスとか。でも、そういうものが、ちっとも、ストーリーやキャラクターに深みを与えてない。そういう風に見えました、そういう風に感じました、ってだけなんだもの。浅い、浅いぞ。ぐあー。
えーと、色々貶しましたが、「美少女アンドロイド」と書いてあればとりあえずいい、という人にはお勧めです。今アニメ化すれば、きっと、マギーに萌え狂う人々が続出するでしょう。私は・・・見ないだろうなあ、やっぱり。