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さおのこと
その1:はったり

さお、というのは洗濯もの干しのことではない。
マイクをつける棒の事である。

よくテレビの中継風景なんかみてると、グレイのもしゃもしゃのぬいぐるみみたいな
物をつけた棒を持ってる人がいるでしょう。あれの、棒の方。
ちなみにグレイのもしゃもしゃの正体は「ウインドジャマーをしたマイク」。

普通はさおを持ってるのは音声さんだ。
効果さんは自前のマイクは持ってるけどさおは持っていない。何故かは不明。
まあなくても困らないというのと、あってもいいかなと思うには高すぎるからだろう。
効果さんはさおは持ってない。

が、私は持っている。

知り合いの音声さんが自作したさおを持っていた。それは普通のさおよりコンパクトで
一度手に持つとなんだかとてもしっくりとして、手放すのがさびしい感じだった。
ずーっと持っていたいと思った。
だからその人に教えてもらい、秋葉原をあちこちめぐって材料を買い集めた。
そして作った。(正確にいうと、作ってもらった)

・・・ひょっとしてあれは赤い靴もとい赤いさおだったのだろうか。

そんなわけでさおを持ってロケに行く。
大抵の音声さんは、私を見て、なーんか頼りない奴が来たなあという表情をする。
ま、無理ないけど。
だが私がぼーっと機材をセッティングしはじめ、さおを取り出すとぴくりと反応する。

ちなみに、私のさおは音声さんが標準で持っているものの三分の一くらいの長さしか
ないので、自作であることは一目瞭然だ。

「お、さお持ってんのか」
と言う人は三十代前半くらいの若い人。
「それどうしたの?」
と聞き、
「ちょっと見せて」
と手にとって子細に眺めた挙げ句、
「ここんとこの細工がやわでうんぬん」
とうんちくを語るのは四十代くらいの人。

私のさおはさすがに素人細工なので、あちこち不具合が多い。
違う現場に行く度にうんちく親父達に色んな応急処置をほどこされて、
どうやら今日も元気に働いている。

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