2007-02-06
§ *NASAの2008年度の予算要求が発表された
ref.NASA's FY 2008 Budget and 2006 Strategic Plan(NASA)
全体の予算は3.1%増。これは去年「2016年までに月へいく」という発表と同時に出された予算プランにほぼ沿った形の要求です。ただし、この3.1%という予算の伸び率は、去年の要求予算を元に出した数字ですから、去年の予想と同じになるのはあたりまえ。問題は実際に2007年度どれくらい予算が下りたかです。ちょうど先週、2007年度の予算が議会を通過したので、実際の数字と比べてみましょうか。
FY | 要求 | 承認 | 伸び率(要求) | 伸び率(実際) |
2006 | - | 16273.0 | - | - |
2007 | 16792.3 | 16215.3 | 3.19% | -0.36% |
2008 | 17309.4 | (17309.4) | 3.08% | (6.32%) |
2009 | 17614.2 | - | 1.76% | - |
2010 | 18026.3 | - | 2.34% | - |
2011 | 18460.4 | - | 2.41% | - |
§ 単位は100万ドル。太字が今回の要求額。カッコ内はこのまま予算が通った時の数字。去年の予算要求では07年度に3.2%増を見込んでいたものの、先週の会議で承認されたのは前年比0.3%減という厳しい数字*2。
実はこの予算、ブッシュ大統領の「月へ行くぜ」宣言を受けて新しい宇宙開発のロードマップが発表されてから最初に承認された予算です。つまり、これがそのプランに対して、議会が下した評価ということです。もちろん今後増額される可能性がなくはありませんが、この実際の予算を元に、2008年度の要求額の前年比を計算すると6.3%増。予算据え置きが決まった翌年にこんな伸び率で予算を通すのはかなり難しいでしょうね。
しかも、今でさえ新しい有人機の開発とスペースシャトル/ISSの維持費用で予算はぎりぎりの状態。科学研究予算はばっさり削られ、宇宙科学関連のコミュニティでは轟々の非難が吹き荒れています。贅肉どころか筋肉まで削って現状維持をしているのが実情。これ以上削れる予算はほとんど残っていないんじゃないでしょうか。
グリフィン長官は予算要求に関するコメントの中で、「予算減については、開発のペースを緩めることで対応する」と述べています。でも、それは2010年に予定されているスペースシャトルの退役から、新しい宇宙船の就役までに空白の期間ができる、ということです。かつてNASAは、スペースシャトルの開発が遅れたことで1975年から1981年までの6年間、まったく有人宇宙飛行ができませんでした。彼らはまた同じ轍を踏むことになるんでしょうか?
ちょうど去年の今頃、NASAの予算要求書を斜め読みしながら、予定通り予算が下りたとしても「2018年に月へ到達」を実現するのはかなり難しいんじゃないか、という予測を立てましたが、1年目にして既に破綻の兆しを見せているという感じですね。~
ref.NASA予算案を読んでみる(Junkyard Review)