2006-12-15
§ **[sts116] STS-116 Flight Day 7
2回めの船外活動も無事終わり、電源の切り替え作業は無事終了しました。さて、7日目は、第3回船外活動に向けての準備、合同記者会見などが主なイベント。冷却装置への触媒の充填など船内からできる作業、運んできた荷物をISSへ移す作業なども行われます。合同記者会見は日本時間午前5時47分からの予定です。~
ref. STS-116 打上げ関連URL(Garbage Collection)
§ **[clip] 特設サイト きく8号/H-IIA11号機打ち上げへ!(JAXA)
さて、STS-116もひと段落したところで、次は日本の衛星です。週末、H-2AF11に乗せられた技術試験衛星8号機(ETS-VIII)、通称「きく8号」が打ち上げられます。打ち上げ時間は日本時間12月16日(土)、15:32〜15:44の予定です。~
例のごとくカウントダウンスクリプトをどうぞ。現在のところT-0を15:32に設定しています。~
ref.Countdown for ETS-VIII/H2AF11
今回打ち上げられる「きく8号」は静止衛星軌道から移動体通信の中継をするための実験衛星。要するに、携帯電話サイズの端末で衛星通信をするためのテスト。いかんせん端末のサイズが小さいと出せる電波も弱いし、静止軌道はとても遠いから、衛星側ではものすごく大きなアンテナを広げなくちゃいけない。というわけで、「きく8号」はテニスコートより大きなアンテナ(19m×17m)を2枚広げる。もちろん、広げたままでは持っていけないので、ロケットのフェアリングの中に小さく折りたたんでおく。これを軌道上で大きく広げて、しかもきれいなアンテナの形を保つのはなかなか大変。この展開技術が今回の目玉の一つ。
1枚のアンテナは14枚(左右合計28枚)の小さなユニットからできていて、このそれぞれのユニットをちょうど傘を広げるみたいなやり方で展開する。使われているモーターは片側4個。2000年12月に行われた最初の軌道上実験は途中で引っかかって失敗したけれど、その後航空機による無重力実験、地上での展開試験、2回目の軌道上実験ともに成功して、晴れて今回が本番。うまくいくといいなあ。
大型アンテナの展開は打ち上げの1週間後。予定通りならクリスマスイブの前の日。
もう一つ、少し地味だけれど注目したいのは、衛星バスの技術開発。「衛星バス」というのは、電源とか通信とか姿勢制御なんかを一緒にした「衛星の殻」みたいなもの。この殻の中に必要な機材を詰め込んで、外側にアンテナやセンサーをつけて衛星を作る。毎回違うものを作っていると大変なので、ある程度規格化しておいてミッションによってちょっと直して使う。たいていは海外メーカーのを買ったりするんだけど(静止衛星用だとボーイングとかロラールとかロッキードマーティンが有名)、今回は静止衛星用の大型バスを国内で新開発。公式リリースを信じるなら、どうやら軽くて使いやすそうなやつができたみたい。実は、きく8号で開発されたこの新しいバスシステムはすでにDS2000バスとして実用化されていて、MTSAT-2で使われているんだそうな。きく8号は地上に居る時から既に実績を上げているということやね(実験機より実用機が先に上がるとは、こはいかに)。
いい衛星バスを使える、というのは衛星の開発ではすごく大切。軽ければ沢山機材が入れられる(あるいは姿勢制御用の燃料が沢山積める)。熱効率がよければ機材のほうであんまり熱のことを考えなくて済む(機材を小さくできる→沢山積める)。電源周りがしっかりしてれば安定した動作が望めるし、容量が大きければ多少電源を食う機材も乗せられる。データ転送は速いに越したことはないし、組み立てやすさや試験のしやすさだって大事。(もちろん、値段が安ければもっといい)。こういう要件を満たしてバスを作るというのはやっぱりなかなか大変なことなのだ。
ref.宇宙利用推進本部:Satellite Navigator(JAXA)~
ref.Space Japan Milestone : 大型展開アンテナの開発(Space Japan Review No.47)※PDF~
ref.Space Japan Milestone : 大型展開アンテナ小型・部分モデル2の開発(Space Japan Review No.49)※PDF~
ref.静止衛星用標準バス“DS2000”のシステム技術(三菱電機技報2005年8月号)※PDF
§ **[clip] Major NASA - Google Announcement Planned for Friday(SpaceRef)
NASAとGoogleが合同で今週の金曜日17:30 (日本時間の土曜日7:30)に「何か」を発表する、というお話。わぉ!~
つい先日、ESAがGoogleEarthにデータを提供したというニュースが流れましたが、ESAに続きNASAもGoogleと一緒に何かをやるようです。わー、なんだろう!!~
ref.European Space Agency and Google Earth showcase our planet(ESA)
§ **[clip] The Rise of a Giant(ESO)
ヨーロッパ南天文台(ESO)が直径42mの主鏡を持った超巨大望遠鏡(E-ELT:European Extremely Large Telescope)の最終設計に入るよ、というお話。3年後に着工、2017年にファーストライトの予定。
実はこれ、最初は主鏡直径100mというとんでもないサイズで計画がスタートしたものの(OWL)、さすがに大きすぎて「技術的には可能だけど、そんな予算を出すのは不可能」という評価が下ってサイズを縮小して再スタートしたもの。それでも42mか...(このサイズなのはアメリカ(TMT)や日本(JELT)が計画している主鏡直径30mの望遠鏡へのあてつけだろうか?)。~
ref.Record mirror for Euro telescope(BBC)
現在の見積もりでは最終的な完成までに80億ユーロ(約1200億円)かかるそうな。おー、大型加速器なみのお値段ですな。すばる望遠鏡3台分。まあ国立天文台が米欧と共同で作っているALMAの予算がだいたい1000億円だから、ありえなくはないか。
でも、このサイズの望遠鏡は作ったあとが大変そう。メンテナンスとか、観測機材の開発にかなり時間とお金がかかるんじゃないかな。観測計画も、5mとか10m級をもう少し沢山作ってサーベイ観測(対象を特定せずに広い領域を観測して面白そうな天体を探したり、統計的なデータを取るための観測)をしっかりやらないと、宝の持ち腐れになるんじゃなかろうか。まあ、僕はロケットも望遠鏡も「安くて使いやすいのを沢山」派なので、これもちょっと偏った意見だけどね。
太陽嵐のニュースが出ていますが、シャトル帰還に影響でないでしょうか。心配です。
どうやら、通信にちょっとノイズが乗った程度、寝ている間に緊急避難しなくていいように、遮蔽物のあるところで就寝、という程度で済んでいるようです。このクラスならEVA中にでも起きない限りほとんど心配はなさそうです。<br>ttp://www.space.com/missionlaunches/061213_sts116_solarflare.html
<br>Space Station Glitch Possibly Caused by Solar Flare <br>おそらく太陽面暴発に起因する宇宙ステーション不具合 <br>ttp://www.space.com/missionlaunches/061215_sts115_issflare.html<br>という記事が出ています。<br>念のため、シャトルはISSの影に入っているのだろうか。
わ!ほんとだ。情報ありがとうございます。<br>これは、ISSの機器が直接ダメージを受けたんじゃなくて、<br>紫外線が増えたことで大気が膨張して空気抵抗が増したということのようですね。<br>スカイラブが予定より早く大気圏突入してしまったのと同じかな?<br>>念のため、シャトルはISSの影に入っているのだろうか。 <br>今回の規模なら大丈夫だと思いますが...ちょっと調べてみようかな。