2006-05-29
§ **[clip] Astronomers Use Innovative Technique to Find Extrasolar Planet(HubbleSite)
プロの天文学者とアマチュアが共同で太陽系外惑星を見つけるためのシステムが成果を出している、というお話。
これは、「トランジット法」という検出方法を使って系外惑星の候補天体を探し、それが本当に系外惑星かどうかを確かめるためにアマチュアが協力して検証を行い、最終的に大型望遠鏡を使って細かい観測を行う、という3段構えのシステム。
太陽系外惑星を発見するのは、ちょっとしたテクニックが必要になる。星はとても遠いところにあるし、その遠さに比べてその星の周りを回る惑星は小さすぎるし、星に近すぎるから、普通の望遠鏡を使っては見ることができない。で、どうするかというと、惑星につられて中心の恒星がふらついたり(ドップラー偏移法)、惑星が恒星の前を通る時に光度がごくわずかに変化したり(トランジット法)するのを利用する。
ただし、惑星が恒星の前を通り過ぎるのを利用するトランジット法は、太陽系と軌道面が揃った惑星系しか見つけられない(そうじゃないと、惑星が目標の星の前を通ってくれない)。だから、これまでは新しい系外惑星の発見には星のふらつきを利用するドップラー遷移法が使われてきた。この方法は、検出するのにすごく大きな望遠鏡が必要だけれど、目標となる惑星系と太陽系との位置関係にさほど大きく依存しないという特徴がある。
なにしろ、大きな望遠鏡は世界中の天文学者が使いたがっているから順番待ちが大変だし、お金も沢山かかる。候補の天体を見つけるところは、なるべく沢山のサンプルから候補を探したいし、あまりお金をかけたくない。どうしようか?星の光度の変化はさほど大きな望遠鏡じゃなくてもかなり細かく観測できる。だったら、安い機材を使ってとにかく沢山観測すれば、トランジット法でも新しい惑星が見つけられるんじゃないか?これが今回のアイディア。
というわけで、彼らは民生用の200mm望遠レンズを2本束ねた機材を使って、自動的に太陽系外惑星の候補天体を見つけ出すシステムを作った。次に、こいつで数千もの天体から数百の候補を絞り、そこから天文学者がさらに数十の「これはいけるかな?」という候補を拾い出した。で、これらの星に次にトランジットがおきそうな日を予測して世界中のアマチュア天文学者に「ねえねえ、僕らの代わりにこの星を観測してくれない」とお願いした。なにしろデータは沢山あったほうがいい。で、最後に「これはもう間違いありませんよ!」という候補を大きな望遠鏡を使って観測した、というわけ。
「大きい望遠鏡を長い時間使いたい!」というのは、天文学者なら誰でも思うこと。大きな望遠鏡を使って、誰も見たことが無い天体を研究すれば、きっとすばらしい成果が得られるに違いない。でも現実にはそう簡単にはいかない。だれもがすばる望遠鏡を使えるわけじゃないし、割り当てられた観測時間で成果が得られるという保証もない。じゃあ、手元にある限られたリソースを使って何ができるだろう?実はこういう工夫からとてもすばらしいアイディアや成果が得られることは少なくない。もちろん、お金を沢山使って大きな望遠鏡を作ることも大切なことだけれど、こういう研究にもちゃんと光が当たってほしいなあ。
§ **[clip] Gecko-like robot scampers up the wall(NewScientist)
ヤモリロボットができたよ、というお話。これは、以前紹介した「ヤモリはファンデルワールス力でくっついている」という話題の応用ですね。「ヤモリテープを作っている」という話はあったけれど、今度はロボット。リンク先からビデオも見られる。か、かわいい!ぺったん、ぺったん。
sf)StickyBot(Stanford)※公式
この研究は、DAPA(米国防総省高等研究計画局)のスポンサードを受けたRiSE Projectの一環として作られたもの。リンク先には壁のぼりロボがたくさん。
§ **[clip] Mars robots to get smart upgrade(BBC)
火星で活躍しているローバーたちのソフトウェアがアップデートされてさらに賢くなったよ、というお話。
ダストデビル(小さな竜巻)や雲の様子などを、状況に応じて自分で判断して撮影する機能が追加されたそうな。で、大事そうなやつだけ地球に送信するんだって。うわぉ!
今は、割り当てられた時間ずーっと撮影したものを全部ダウンロードして人間が確かめているんだけど。これからは、ローバーたちに任せておけば、ダストデビルや雲が現れた時のデータだけをダウンロードできる。これはものすごくデータ収集の効率を上げるはず。
僕のもアップデートして欲しいぞ。いやほんとに。
§ **[clip] Mysterious glowing clouds targeted by NASA
夜光雲を観測する衛星が打ち上げられる、というお話。
夜光雲というのは、夏の北極や南極上空にできる特殊な雲。普通の雲がせいぜい高度10kmぐらいなのに、夜光雲は高度80kmぐらいのところにできる。やたらと高いところにあるから太陽が地平線の向こうに沈んで地上が夜になっても、しばらく光が当たっているので、まるで夜光っているみたいに見える。だから「夜光雲」という名前がついているけれど、別に本当に光を放っているわけじゃない。実は夜光雲のことはあまりよくわかっていないけれど、どうやら火山灰や流星が撒き散らしたチリを芯にして氷が成長することによってできるらしい。
さて、この夜光雲は気温が低いほうができやすいという特徴がある。この夜光雲ができる「中間圏界面」という領域は成層圏と対流圏の間、地球大気の中でも一番温度が低い場所。実は、この領域の気温は地表が暖かければ暖かいほど冷たくなる。だから夜光雲は地上が暖かく上空が冷たい夏にできやすい。
で、最近この夜光雲の発生が増えているそうな。これは、地球温暖化のせいで地表の気温が上がったことと、高空に到達した大気汚染によるダストが芯になって雲ができやすくなっているかららしい。というわけで、人工衛星から夜光雲を継続的に観測をすれば、地球全体で地球温暖化や大気汚染がどれくらい進んでいるかが分かるかもしれないのだ。
もちろん、夜光雲を観測すれば、気象観測用の気球やロケットを上げないと分からなかった高空の大気の様子もわかる。こういう場所の大気の状態は、地球の気候変動に大きな影響を与えているともいわれているから、結構いろいろなことが分かるかもしれない。
これ、すばらしいね!