2005-12-28
§ [clip] Daily Clipping
- An Explosion on the Moon (Science@NASA)
- NASAの天文学者が月面で爆発が起きたのを観測した、というお話。直径12cmほどの隕石が衝突したらしい。月への隕石の衝突を観測するための望遠鏡を動かし始めたその当日に見つけたんだそうな。実は、月への隕石の衝突は決して珍しい現象ではなく、日本でも流星群の時に月面への衝突が観測されたりしている。
- 恒常的に隕石衝突の観測ができるなら、以外に面白いデータになるかもしれない。ダストトレイルの分布が高精度で測れるとか...あんまり面白くないか。分光観測できたりするともっと面白いかもなあ。彗星由来じゃないダストの分布なんてのが分かると太陽系形成論辺りにインパクトがあるかも。一瞬じゃダメかな?
- NASA ESAS Final Report (DRAFT)(SpaceRef)
- NASAの次期計画に関する技術報告書が公開(というよりリーク)された。PDFは全部で800ページ弱、50Mもある。エクゼクティブサマリーをぱらぱら見たけれど、あれにも使えますこれにも使えます、でもお金もかかるよ、という感じの報告書。
- えー気になるお値段の方は...この報告書、なんだか、巧妙に総額に対する言及が避けられていて、いったい全部でいくらかかるのかがよく分からない。一番直接数字が出ていたのは「アポロと比べると」という部分。開発費を含めて7回(アポロと同じ回数)月までいくのにかかるコストの総額は976億ドル、アポロより3割お得だそうな。年間コストの推移を見ても、2008年の段階ですでに、このプロジェクト単体の予算が、現在のNASAの年間総予算(約160億ドル)の半分に達し、月への飛行が予定されている2018年には、1.2倍から1.5倍になっている。いったいNASAの総予算がいくらになることを想定しているんだろう?
- この予算計画だけ見ても、このプロジェクトに追従するのはかなりリスキーだということが分かる。だって、ありえないでしょう?NASAの予算が10年で倍になると思う?年間予算が1兆円を超えるようなプロジェクトに今のアメリカがGoサインを出すかな?アポロの時はそれでもまだ「ソ連に勝って宇宙の覇権を握る」という大義名分があったけど、今はそこまで切迫した理由はないよね。もう一度月へ、というプロジェクトはなかなかわくわくするけれど、ちょっと風呂敷を広げすぎたんじゃないかな?
- 結局、計画が二転三転したあげくに、CLV(有人打上げ機)だけ新しく作って、カーゴは既存の打上げ機を使う、ISSをちまちまと延命しながら次のチャンスをうかがう、という感じになるんじゃなかろうか。で、月へつれてってあげるよ、という甘い言葉に騙されたどこかの国がまた割りを食う、と...あああ、すごく当たりそうだ。げんなり。
- Europe set to launch Galileo era(BBC)
- ガリレオ衛星の打上げ迫る、というお話。ガリレオ衛星というのはEUが整備を進めているGPS衛星のこと。実は今世界中で使われているGPSはアメリカ軍が打ち上げたもの。一応、民間に開放されているとは言うものの、一国の、しかも軍事目的の衛星にナビゲーションを頼るのは安全保障上あまりよろしくない。当然ながら、じゃあ自前のGPSを打ち上げるのだ、ということになる。EUのガリレオもずいぶん前から計画はあったんだけど、各国の思惑とか、今使えてるんだからいーじゃないかお金かからないしとか、某国の反発とか、いろいろな理由で計画が延期されていた。今回、ようやく1機目(デモンストレーターだけど)が打ち上げられることになった、というわけ。
- GPSというのは、とっても便利なだけに、どうしてもきな臭いお話がついて回る。これはとても大事なお話。表向きは、便利になるよー、という話しかされないので分かりにくいけれど、ふたを開けると結構どろどろなのだ。日本も他人事ではないので、ちょっとまとめておこう。
- 僕が関係者なら、GPSの電波を暗号化するシステムを組み込んで、嫌いなやつには使わせない。もちろん、僕が思いつくぐらいだからGPSにはそういう機能がある。実際に、1990年から2000年までの間は、民間では解像度の荒いデータしか使えなかった。今では高精度のデータも民間に開放されているけれど、これを元に戻すのはとても簡単だし、他国がまったく読めなくすることもできる(はずだ)。これが外交のカードになったり、軍事的にとても有効な手段にならないとは限らない。自前のが欲しい!というのは至極もっともな話。もちろん、現行のGPSで一国独占状態にある国は、他の国がより高性能な衛星を上げることにいい顔をするはずがない。というわけで、関係各国の間でばちばち火花が飛ぶことになる。
- もちろん、日本も自前の衛星を打ち上げることを計画している。「準天頂衛星」と呼ばれているもので、2008年に打ち上げが予定されている*1。
まあ、これは表向き現行のGPSを補完するものということになっているけれど、単体でもそれなりに動作するように作るはず(そうじゃないと、本当の意味での補完にならないしね)(追記、GPSがないと動かないそうです。詳しくはコメント欄参照。そりゃそうだ。)。たとえば、本当は古くなった今のGPSと組むより、新しい高性能のガリレオ衛星と組むほうがなにかと便利なはずだけど、そんなことをしたらたぶん某国が黙ってはいない。だから、打上げをアリアンスペースにやってもらうか、ロッキードマーティンに頼むか、H2Aで打ち上げるか、なんてのがとても問題になったりする。 - 選択肢が増えるのはいいことのような気もするけれど、いざこざの火種になる可能性も高い。なんにしてもシステムが出来上がるまでにあれこれ悶着があるのは避けられないと思う。よい方向に行くといいけれど...
- NASA Probe to Light the Skies on Jan. 15 Re-entry
- 彗星のチリを回収したスターダストが1月15日に地球に帰ってくるよ、というお話。衛星からカプセルが切り離されるのが東部標準時0:57、4時間後には大気圏に突入し、5:12に着地予定。わくわく!
- ちなみに、スターダストのカプセルは、パラシュートが開かずに地表に激突したジェネシスと同型、今度はうまく行きますように。
*1 これはこれでなかなか面白い衛星なんだけど、その話はまた今度。
二匹目のドジョウを狙ったメーカーがK段連を焚き付けて総合科学技術会議で「S」評価をもらったものの責任官庁が決まらず中の人も匙を投げてるGPSが止まると測位すらできない衛星のことですか?
うわ、そうなんですか?>GPSが止まると<br>なんだかもめているという話は聞いたんですが、そんなことになっていたとは。
場所と時刻が未知数なので、最低4機の衛星を補足する必要があるのです。<br>http://y-page.yatsushiro-nct.ac.jp/u/irie/GPS/genri.htm<br><br>ですから天頂に1機の衛星「だけ」ではどうにもならないのです。
そうか、そうですよね。3機とばすのは、どれか一つを頭の上に置いておくためであって、相互に補完させるためじゃないですもんね。そもそも3機じゃ足りないか。なるほど。
理系白書’06:第3部・漂う戦略/3 官民共同衛星に税金750億円 <br>http://www.mainichi-msn.co.jp/science/news/20061115ddm016070080000c.html
×最低4機の衛星を補足<br><br>○最低4機の衛星を捕捉