2005-12-19
§ [clip] Daily Clipping
- 神奈川工科大学、au携帯電話機による“モバイル学生証”を導入(ascii24)
- 神奈川工科大学が、携帯電話に学生証の機能を持たせたものを新入生に入学祝として配る、というお話。同時に、携帯やWebサイトを通じてアクセスできる学内情報サービスの提供も始めるらしい。
- 気になったのは、記事のサブタイトルにもなっている、大学関係者の一言。
- ええええ?意味が分からない?なんで、携帯に学生証が入ると学生のセンスが鍛えられて、自信がつくんだ?デジタル機器の多様性と柔軟性をこれほど無視した施策もないと思うんだけど、こんなことで、学生のセンスが磨かれると思っている関係者のセンスをもう少し磨いたほうがいいと思うぞ。
- AU以外の携帯電話を持っている人は2台持つのか?あの機種が気に入らない人はどうするんだ?あっという間に旧機種になると思うけれど、ちゃんと他の機種への対応もしてくれるのかな?その携帯電話の使用料は誰が払うんだろう?
- これから大学に入ろうとする高校生なんかは、携帯電話の使い方と機種選びにはかなりこだわりがあるんじゃないだろうか。携帯電話はもはやただの機械じゃなくファッションやアイデンティティの一部として機能するようになっている。あの小さな機械に対する愛着や親しみを無条件に交換可能なものだと思っている時点で、関係者のデジタル機器に対するセンスのなさが露呈しているような気がする。
- 大学経営の最大の課題が新入生の確保だとすれば、どう考えてもこの施策は無駄なコストを増やしているだけで、メリットがあるとはとても思えない。
- 視点を変えれば、セキュリティという観点から「これって、やばくねーか?」とか、ユーザビリティやマーケティングという視点から「これってすごく使いづらいよね」という意味で、逆にとてもいいセンスが身につくかもしれない。それを意図しているとすればたいしたものだけれど...まあ、ありえないな。
- 追記) ... と書いておいていきなり不安になった。もしかしたら今の高校生は「携帯の機種なんて何でもいいよ、へー、フェリカ携帯もらえるんだ、ちょークール!」と思ったりするんだろうか?
「若者のセンスを鍛え、自信を持たせる起爆剤になれば」
- Broody squid carry their eggs in their arms(NewScientist)
- テカギイカが卵を腕に抱えて運んでいるところが撮影された、というお話。リンク先に動画あり。ただし、粒々に耐性のない人は止めた方が良いかも。
- テカギイカはこれまで、海底に卵を産み落として、後はほったらかしだと考えられていたけれど、子イカのそばで親イカが見つかったり、親イカといっしょに卵が見つかったりして、親イカが卵の世話をしている可能性が指摘されていた。で、今回なんと世話をするどころか、卵を腕に抱えて運んでいるところが撮影された、ということらしい。しかも腕の中で産卵してるし。ひゃー!これはすごい。ジェット推進式の頭足類にしかできない所業だねぇ。
- いや、しかし、これはなかなか美しい光景だよ。
- Brain scans help think away pain(BBC NEWS)
- MRIを使って自分の脳の働きを見ながら「練習」したら、痛みを軽減することができるようになったよ、というお話。
- まず、痛い経験をする。次にその体験が比較的楽しいものであると考えるようにする。この一連のトレーニングをMRIで自分の脳が痛みに反応している様子を観察しながら行ったグループと、そうじゃないグループ(MRIを見ない、別な部位を見る、他人のスキャンを見る)とで行った結果、自分の脳のスキャンを見ながらトレーニングしたグループの方が「学習効果」が高かった(=より痛みを軽減することができた)ということみたい。
- でも、恒常的に痛みに耐性ができてしまうというのが、本当にいいことなのかどうかはちょっと疑問。確かに、恒常的に痛みに耐えなくちゃいけない人には有効かもしれない。でも、病状の変化に気づきにくくなったりしないだろうか?あるいは、この手法が一般化すると、患者は我慢できなくなるまで病院に来ないという事態が発生しないだろうか?不用意に採用すると、治療が手遅れになる可能性が増えるだけのような気がするけど...
§ [book] 建物が壊れる本
なんだか、建築方面がざわざわしているので、なんとなく再読。
どちらの本も読むと建築物を見る目が劇的に変わる。おすすめ。
- マッシス・レヴィ/マリオ・サルバドリー『建物が壊れる理由』建築技術(amazon)
- タイトルそのまま、古今東西の建築物の崩壊事故を紹介。建築物の構造設計の重要性とその限界をまざまざ教えてくれる。一つ一つのエピソードがいちいち戦慄するような内容。読んでいると、なんだか周りの建物が今すぐ崩れだしそうな気がする。そこらのホラーなんかよりよっぽど怖い。内容はそれなりに高度だけれど、ドキュメンタリー調でぐいぐい読ませる。名著。
ちなみに、書かれたのは1992年、当然WTCの話は出ていない。が、第2章が1945年のエンパイアステートビルへのB25爆撃機の衝突に当てられており、今読み返すと全然違う読み方ができる。
- 望月重『ビルはなぜ建っているか なぜ壊れるか』文春新書(amazon)
- こちらは、「建物がどんな力に支えられているのか」と「そのバランスが崩れるとどうなるか」に焦点を当てて書かれた本。作者の望月氏は『建物が壊れる理由』の訳者。新書ということもあって『〜理由』よりもずっと分かりやすい(ただし、本としての面白さは『〜理由』の方が上)。建築構造の入門書としてもとてもいい本じゃないだろうか?日本特有の事情や事例も沢山。ちなみに、WTCがなぜ崩れたかはこちらの本を読めば書いてある。