私は二種類の耳を持っている。
ということに気づいたのは実はごく最近だった。
(正確にいうと4種類、もしくはそれ以上なのだが、残りについてはまた今度)
<基礎知識その1>
声をとる仕事を「音声さん」または「録音部さん」という。
効果音やBGMをつける仕事を「効果さん」または「音効さん」という。
ドラマでもバラエティでも、原則的に人の声はモノラルのガンマイクでとる。
使うのはたいていの場合、ゼンハイザーのMKH416というマイク。
風が強かったり周りがうるさい場合は、816という長くて指向性の高い種類を使う。
どっちにしてもこれらのマイクは指向性が高くて、まともな音になる範囲は5°位である。
だから「面をあわせる」といって、常に喋っている人の口にきちんとマイクが向くように
しなくてはならない。
面が外れていると、周りのノイズばっかり拾って肝心の人が何言ってるのやら、という
ことになってしまう。
(逆に言えば、面があってさえいれば、波打ち際でもガンマイクでとれる。そりゃもちろん、
技術と、波音の程度によるが)
しかも同時に、レベルが適性になるように、声の大きさにあわせて口からの距離を調整
するのだ。
人の声をとるにはえらい技がいる。
それならピンマイク(ワイヤレスマイク)使えばいいじゃんと思った人、
それはそうなんだが、ドラマの場合はピンの音だと貧弱すぎて、BGMに負けてしまうんだな。
バラエティはそんなこと言ってられないですけどね。
で、これが人間ってたいしたもので、聞きなれると微妙に面が外れただけでわかるように
なるんだね。多分計ったらたったの数センチ、というずれでもわかってしまう。
音を聞いただけで「さっきの台詞の頭だけ振り遅れた(マイクを向け損なった)でしょ」
みたいなダメだしができる。
こういう時、耳は音の芯の有無、音圧、音量を聞いている。
これが「モノラル耳」。
「芯のない(=面があっていない)音」というのを、どう表現すれば良いか・・・。
例えば絵、絵の具。
芯のある音は油絵の具。濃くて、色鮮やか。表面には艶がある感じ。
芯のない音は水彩絵の具。薄く、色んな色が混ざって濁って、何描きたかったのかわからない。
あくまで例えですけどね。
ああ長かった。
次回は「ステレオ耳」。
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