2001.11.28 水
「電波系。」
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先日、ボクシングの試合(のシーン)のロケに行った。
いつもはプロレスをやるという会場。小学校の体育館がでかく
なったようなスペース。
二時に寝て五時起きだったのでぼーっとしていた。
カメラにうつらないようにリング脇にしゃがみこんで、同録を
数テイクまわす。
(注:同録=映像をとっている時の音をとること。これに対して
映像抜きで音だけとることを「オンリー」という。"pastworks"
の用語集参照)
さて、目も覚めてきたことだし、と思って立ち上がった瞬間。
ヘッドフォンにものすごいノイズが。
びびびびびびびびびびびびびびびびび。
・・・ぎゃーなんじゃこれは!
マイクを東西南北どの方向に向けても上向いても下向いても
びびびびびびびびびびびびびびびびび。
ううう。これでは仕事にならん。
しかしこのノイズ、どっかで聞いたことが。
・・・電源ノイズ。
以前小劇場で芝居の音響効果をやっていた時、照明のケーブル
とスピーカーケーブルが近い位置にあると、照明のフェーダーを
あげたとたんに同じノイズがのったような。
プロレスにつきものの、このでっかいライトが悪いんだ、きっと。
劇場と比べ物にならないくらいの電源が必要なんだろう。
後でオンリーとる時には消してもらおう。
と一応の結論は出たものの、何故か不吉な予感が。
で、探しました。明りがついていてもノイズの入らない場所を。
結論からいうと、縦横50メートルはあろうかという建物の中で、
ノイズが入らなかったのは、たった2ケ所。
しかもどちらも天井向けのある一点だけ。
文字通り一歩でもズレるとノイズの嵐。
・・・マジかよ。どーなってるんだ、ここの電源は。壁全部電源
だったりして。あはははは。
そして悪い予感は的中した。
照明を全部落としてもらったのにノイズが消えない。
ガヤをとるために残ってもらったエキストラは50人弱。
ちょうど昼食時。みんなお腹空いて機嫌悪そう。
迷ってる時間はない。金もない(←関係ない)
おもむろにさっきのポイントへ。
「はーい皆さん、すみませんが私ここから動けないんで、こっち来て
下さーい。はい、そこの練習生役の人ここでアップして下さいねー。
そっちのお父さんそこの入り口から入ってきましょうかー」
今回の教訓:やればできる。
今回の後日談:先輩に聞いたところ、
「あー、御台場はダメだよー。昔も今も、船だかなんだか知らんけど、
ノイズだらけだった。東京タワーの近く行くとノイズのるのと同じだよ」
と言われた。
・・・早く言ってくれ。
ちなみに私は昔、劇用車の「車内で聞こえる走行音」をとるために
品川から東京タワー付近を走ったことがあるが、見事にノイズがのって
使い物にならんかった。
・・・電波にあふれてるんだねえ、この世界。
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BGM:Back to Slowfood
2001.11.22 木
「絶対音感をどう克服するか その2」
(勝手にタイトル変わっている)
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「続きは明日」とか言っておいて一週間後という・・・。
前回は、「音楽を聞くのに絶対音感は邪魔だ、もしなかったら
どんなふうに音楽を楽しめるんだろう」という話だった。
結論から言ってしまおう。
絶対音感をなくすことは(少なくとも私には)できない。
だが、本当にいい演奏は、絶対音感なんかぶっとばして、
その音楽の世界に連れていってくれる。
だから絶対音感があろうとなかろうと、たいして気にやむ
ことはない。
音楽を楽しめなければそれはその演奏が悪いのだ!
臆せず席を蹴って(でも演奏中は人の迷惑、注意)、
おいしい酒でも飲みに行こう。
はっはっは。
わかりやすかろう。
・・・これだけだとなんか手抜きな感じがするので。
絶対音感がない方が、先入観なく音楽が作り出す世界に
入り込めると思う。
それは事実。
でも、(音程はともかく)音の響きや広がりを聞き取れたり、
楽器が聞き分けられる能力は、無駄にはならないだろう。
絵を見る時に画材や手法のことを知っていたら、また違う
鑑賞の楽しみがあるのと同じだ。
まあ絵は近づいたり離れたりして、フォーカスを変えられる
のでいいですね。
近づいて筆のタッチを見て、離れて全体の雰囲気や勢いを
見たりして。
と書いて気づく。
先週「ます」をききながら自分がやろうとしていたのは、
音楽に自由にフォーカスがあわせられる耳になろうとして
いたのだということ。
カメラのように耳の絞りを自在に変えられたら、色んな
音楽の聞き方ができるだろう。楽しそうだ。なりたいな。
あ、ちなみに先週のコンサートの時は、最後に演奏された
ロシアの作曲家のピアノ六重奏を聞いている時には
ドレミファで聞こえなかったんですねー。
第一バイオリンの音が華やかで艶やかで、まばたきも
忘れて(多分口も開いて)聞き入ってしまいました。
やればできるんじゃん。
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BGM: LENNY : Lenny Kravitz
2001.11.15木
「絶対音感のない世界」
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友人にチケットをもらってクラシックのコンサートに行く。
「クラシックのコンサート」!何年ぶりだろう。いやはや。
室内楽で、弦4〜5本+ピアノ。
・・・この編成で東京文化会館大ホールは広すぎる。
一曲目はシューベルトの「ます」。弦4本+ピアノ。
どの楽器も音に張りがなく、全く通らない。乾いた薄い音ばかり。
一階前から14列目という良い場所だからかろうじて聴けるが。
これはつらい。
ところで私には例の「絶対音感」というやつがある。
何を聞いても「ドレミ」で聞こえるというめちゃくちゃ不幸な
人間だ。
小さい頃は、不協和音でも何でも四和音まで聞き分けた。その頃は
当たるとほめられるので喜んでやってたが、今は邪魔なだけだ。
「さいた・さいた・チューリップの花が」が
「ドレミ・ドレミ・ソミレド・レミレ」に聞こえる。
救急車の音が「シーソー・シーソー」に聞こえる。
どうやってもそう聞こえる。
「ます」を聴いている間、余りに退屈だったので、
「絶対音感がなかったら音楽はどう聴こえるんだろう」ということを
ずっと考えていた。
暇だし、試してみよう。
まずメロディを追うのをやめる。
「耳の意識」を必死に拡散させる。
私の耳ではせいぜい三種類のメロディしか同時に聞けないので、
三種類以上聞こうとすれば全部の音のフォーカスがぼやけるのだ。
そうすると、一つ一つの音の流れではなく、音と音がからみあって
描き出そうとしているものの全体像を感じられるようになってくる。
それから目を閉じる。
目を開いているとどうしても演奏者とその手元に意識がいってしまう。
ボウイングを見ているとメロディの流れが手にとるようにわかり、つい
追いかけてしまう。
だから目を閉じて、響き=音楽の全体像を感じようとしてみる。
だが実はここにも落とし穴がある。
舞台音響をやっていた頃の名残りで、音の響きや広がりが「目に見えて」
しまうのだ。
演奏している人々が、舞台面から4〜5mくらいのふわーっとしたドームの
ようなものに包まれているように思えて仕方がない。
(観客の拍手を聞いててわかったのだが、このホールは案外残響が短い)
音楽を「感じる」のにはなんとも邪魔だ。ああ最悪。
・・・まとまらなくなってきた。
続きは明日(すみません)。
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BGM: Cinematik Dub:Kazue Takagi
2001.11.13 火
「狭い狭い」
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以前音響効果をやっていたBSデジタルの番組が、無事200回を超えた。
BSデジタルの開始からずーっとだから、なかなか感慨深い。
今は全くの部外者だが、誘ってもらったので記念飲み会に行ってきた。
しかしBSデジタル、誰が見てるんでしょうね。
きっと一般の人にとっては、既に忘れ去られた存在なんでしょう。
地上波もデジタルになろうというのに、わざわざBSデジタルを選ぶ人が
この先増えるんでしょうか?
ちなみにBSデジタルは、数字(=視聴率のこと)が出ない。
数字が低いからという打ち切りはないけど、作る側は手探り状態。
でも私がやっていたこの番組は意外に元気。下手なCSなんかより資金も
あるし(スポンサーに大手がついてる)、スタッフの人数も多い。
ディレクター陣にも、BSデジタルだからこそのコアな番組を作るぞーという
勢いがある。
どんな形でも、続いて欲しいもんです。
ところでその飲み会で、今年五月の韓国ロケの時とても世話になった
照明さんにばったり再会した。
毎日同じ(まずい)ロケ弁を一週間一緒に食べた仲。当然盛り上がる。
私が番組を辞めたのが八月、彼女が入ったのが八月。見事にすれ違い。
・・・本当に狭い世界だなあと思う。
ま、よくも悪くもですけど。
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BGM: Future lounge
2001.11.07 水
「昼寝坊」
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昨日まで五日間、スタジオにこもりっぱなしで収録についていた。
終わるのが早かったので(注:早い=18〜22時位、遅い=25時〜27時位)
毎日帰れたけど、朝がつらいので泊まりっぱなしという人もいるにはいる。
ずーっと同じ部屋(=サブ)にいて、モニタの中だけ朝だったり夜だったり、
時には真夏になったりする。
けっこう疲れるもんですわ。
今回大変だったのはカラオケのシーン。
カラオケに限らず歌もののシーンは、基本的に歌だけ先にとって口パク。
そうじゃないと編集できないから。
歌をとって、それを6mmで出す。これは別に大変じゃない。
問題は鳴りもの。つまり、マラカスとかタンバリンの類。
・・・カラオケ文化にあんなもの持ち込んだやつ、出てこーい!
おかげでえらい迷惑だわ。
要は、あんなうるさいのが鳴っていると台詞がとれないので、鳴らしている
真似をするしかないわけ。
(じゃあカラオケの曲はうるさくないのかって?あれは小さいスピーカーで
ごくごく小さく鳴らすのだ。それでもノリノリ←死語?の芝居をしなければ
ならない役者さんって大変・・・)
台詞をとる音声さん的にはタンバリンは大の敵。みんな口を揃えて
「タンバリン、鳴らさないよ、いいよね!?」
と恐い顔をする。
が、鳴らさないと雰囲気が出ないので効果さん的にはないと困る。
そこで、普段はサブでぼーっと座っているだけなのに、撮影の進行状況をにらみ
つつ、わざわざフロアへ降りて行っては、
「さっきのカメリハのタイミングだったら台詞にかぶらないから、リアルに鳴らし
たっていいじゃないですか」
とか、
「ランスルーではルーズ(ショット)の時に鳴らすのをやめてたけど、本テスで
は絵にない時(カメラにうつってない時)にやめてたから、音的につじつま
あわなくなるじゃないですか」
とかケンカをふっかける、じゃない、交渉するわけだ。
結局タンバリンとマラカスを借りて帰って、会社で生音(11/5参照)をやる
羽目になった。ちっ。
そんなこんなで今日は久しぶりに休みだった。
昨夜11時半から寝はじめて、朝9時に起きた。
顔を洗って朝ごはんを食べて、新聞読んでメールチェック。これで11時半。
うとうとと寝はじめて、気づけば17時半。
・・・17時半?
9時間半足す6時間は15時間半。
・・・なんでそんなに寝れるんだ>自分。
おかげで今日やろうと思ったことはなにひとつやれず。
しあわせな一日でした。
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BGM: JoyRide 山弦
2001.11.05 月
「生音」
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今日後輩と喋っていたら、
「こないだ生音やってる時に昔バスケで痛めた足首がこきこき鳴っちゃって、
えらい困りましたよー」という話を聞いた。大爆笑。
世の中には色んな苦労があるもんやなー、という感想はまあおいといて。
ナマオト、とはなんぞや。
<生音>
アナウンスブース(要はナレーションをとったりその他の音をとるための、
外の音が完全に遮断できる部屋、以下「アナブ」)で、ドラマの効果音に
使う音を作ること。
・・・といってしまうと話が終わってしまうので具体的に一つ。
例えばロケで、真夏にどうしても冬のシーンをとらなくてはならなくなった
とする(回想シーンとか)。
衣装はまあセーターでも気合で着てもらうとして、問題は・・・セミ。
冬にセミは鳴かんだろう。
でも、台詞はリアルタイムで拾うのが基本だし、足音だってある。
こういうときは普通、ひたすらセミに水鉄砲打ったり、地道に鳴きやむのを待ったり
して、台詞にはセミがかぶらないようにする。
でも時間がない・きりがない、というので最悪アフレコになったりする。
台詞問題はとりあえずそれで解決。
が、足音・・・。
そこで、まあ「足音のアフレコ」=「足音の生音をやる」わけです。
具体的には、アナブにあるモニター(注:音は出さない)を見つつ、絵にあった靴を
はいて、歩いたり走ったり。
ただしマイクは固定だから、リアルに歩いてしまうと一定の音量・音質にならない。
その場で足踏み。
これがちょっと難しい。
足元がうつっているカットからルーズショットへ変わったりするのがあわせづらい。
コツは足元ではなく太ももや身体の揺れを見ること。
冒頭の後輩は、この足音の生音をやっていたのに足首が鳴ってしまったのだ。
・・・かわいそうだが、使えない奴・・・。
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BGM: おやつ 渡辺香津美
2001.11.1 木
「1フレームをたたく」
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こないだ友人と話をして面白かったので、今日は「たたく」ことについて。
<ひとくち音響講座:テレビの映像について>
テレビの映像は秒間30コマ(正確には29.97)
この1コマ=1秒の1/30を「1フレーム」と呼ぶ
音効さんが映像にあわせてテレコ(オープンリール)やCDのPLAYボタンを
押すことを、「たたく」と言う(ごく一部に「なぐる」という人もいる)。
ただ「PLAYボタンを押す」なら誰にでもできる。
が、「たたける」ようになるのは少々時間がかかる。技もいる。
今の番組はテロップや画面のワイプにやたらめったらSEをつける。
手順はこんな感じ。
1) ビデオデッキのジョグダイヤルで映像をコマ送りする。テロップが画面
に出た瞬間のタイムを確認。
作業用の映像には、画面の上か下にキャラ(=キャラクター)と呼ばれる
カウンターが表示されているので、それを読むわけだ。
<例>
"0:10:15:18"
=「ゼロH(エッチ)じゅっぷんじゅうごびょうじゅうはちF(フレ)」
(一時間のことを「1H」と言う。二時間ドラマは「2Hドラマ」と呼ぶわけ)
2) テレコにテープをセットする。
音の頭を再生ヘッドから5センチくらい前にあわせる。
(テレコはCDやMDと違って機械の立ち上がりが遅い。再生ヘッドに音の頭を
あわせると、「みにょーん」という感じに音が歪んでしまう)
3) 映像を、音をつけたいポイントの10秒前くらいから再生する。
4) キャラを見ながらタイミングをあわせて「たたく」。
で、何が問題かというと。
・・・1秒の1/30なんていう超一瞬の、しかもたった2センチ位の数字を、
しかも1メートル以上離れたところから読み取るなんてできるか!!
プロ野球選手くらいの動体視力があれば別かもしれんが。
私は最初、目を皿のようにしてキャラをにらみつけていた。
そのうちきっと目が慣れてすごい動体視力の人になるんだと思っていた。
それが全てのまちがい。
先輩について仕事に行った時、お前叩いてみろと言われてやってみたら、
「・・・感動するくらい遅いね」
と言われた。
今思うと、10フレ以上遅れていたに違いない。
だけど!世間の人は1秒の下に時間の単位があるなんて思わないだろう!
アナログの時計を見てみよう、こまかーい点々が打ってあってそれが1秒だ。
その点と点の間なんてどうやったら30に分けられるっつーんだ!!
くやしかったら点書きこんでみろ!(逆ギレ)。
・・・さてどうするか。
結論を言ってしまうと、コツは「はっきり見ないこと」。
見ようと思って見えるもんではない。
そのかわり、数える。というか、リズムを身体に叩き込む。
「1・イチ・ニ、2・イチ・ニ、3・イチ・ニ」というように。
1、2、が秒。イチ・ニ、がフレームの10の桁、つまり10フレ・20フレ。
さすがに10の桁くらいなら、誰でも見える。
それに慣れたら、精度を上げる。
「1・イチと・ニと、2・イチと・ニと、3・イチと・ニと」というように。
と、は5フレ。つまり0F、10F、15F、20F、25Fが数えられたことになる。
もちろん見えないけど、何回もやればドラムのパターンを叩くようなもので
身体が覚えてくれるのだ、
おや、できそうですね。
先ほどの"0:10:15:18"を叩こうと思ったら、
「13・イチと・ニと、14・イチと・ニと、15・イチと、どんっ!!」
と叩けば良いのだ。
ほーら、簡単。
そして不思議なことに、叩けるようになればキャラも読み取れるようになるのだ。
でかいテレビなら1の桁まで(もちろん大体、だけど)読めますぜ。
そして今や、1フレとずれずに叩くこともできるようになりました。
(打率はそんなによくない・・・調子いい時で7割くらい?)
おしまい。長かった。
(ちなみに今時テレコもCDもキュースタート=自動再生スタート、できる。
・・・早く言えって?
でも、SEはともかく曲なんかは叩いた方が作業が早いし、良いものができる。
これは本当)
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BGM: "the BAIDIS years" The Collectors
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