Space Shuttle Launch Sequence

by kashiwai isana(isana.k[at]gmail.com)
2007.05.30 update

Space Shuttle Launch Sequence




Launch Sequence

※数値/内容はミッションによって変化する場合があります。
※リンク先Videoを見るためにはRealPlayer、Windows Media Playerが必要です

Fueling begins - 外部燃料タンクへの燃料充填開始

スペースシャトルの外部燃料タンクは2層に分かれていて、機首側に液体酸素(LOX)、接続部をはさんで、尾部側に液体水素(LH2)が充填されます。これらの液体燃料は極低温でどんどん揮発してしまうため、ほぼ満タンになったあとも打上寸前まで燃料の補充が行われます。また、打上が1日以上延期になった際には、いったん全ての燃料が抜かれます。

ちなみに、シャトルの発射に使われる39番射場(A、Bともに)の北西の角(GoogleMaps)に液体酸素(LOX)のタンクが、北東の角(GoogleMaps)に液体水素(LH2)のタンクがあります。燃料充填中に、これらのタンクから発射台に繋がるパイプから白い煙が上がっていることがあります。

Crew Walkout - 乗組員が発射台に移動

乗組員が、O&C(Operations and Checkout)ビルディング(ref. GoogleMap)からバスに乗って発射台へと向かいます。よく、クルーがプレスに向かって手を振りながら歩いている写真はこのイベントで撮影されたものです。

STS-114でのCrew Walkoutの様子
Video : Crew Walkout(STS-114)

Crew Arrived at Launch pad - 乗組員が発射台に到着

O&Cビルディングから発射台までは約20分かかります。発射台に到着した後、オービターに乗り込むまでの間、クルーは発射台の周りを歩き回ったり記念撮影をしたりして時間をつぶすようです。

Crew Arrived at White Room

コントロールルームから搭乗の許可が下りると("go" for board)、クルーたちはエレベーターを使って発射台の上まであがり、発射台とオービターの間に掛けられた通路を通って、通称「ホワイトルーム」と呼ばれる小部屋に入ります(正式名称は"environmentally-controlled chamber")。この部屋は、オービターのハッチと直接つながっていて、クルーはここからオービターへと搭乗することになります。この発射台からシャトルのハッチにつながる通路のことを、オービターアクセスアーム(Orbiter Access Arm)と呼び、打ち上げ前に発射台に収納されます。

このとき、ハッチ直前のカメラに手書きのカードを掲げてメッセージを伝える飛行士が結構います。

ホワイトルームはとても狭いため、宇宙飛行士は順番に1人〜2人つづこの部屋に入り、最終的なスーツのチェックなどを受けた後、地上作業員の助けを借りて席につきます。席に着くと彼らはヘルメットを被り、地上作業員の手でシートベルトが締められます。飛行士たちはシャトルのシートの上で真上を向いたまま、打ち上げを待つことになります。シャトルのシートは鉄板に簡単なクッションが貼付けられただけのもので、とても座り心地が悪く、宇宙飛行士たちにはとても評判が悪い、とのこと。

ホワイトルームで作業する7人の地上作業員は普通「Close-out Crew」と呼ばれますが、たまに「Cape Crusaders」と呼ばれたりしています。

左:STS-112での打上直前のオービター、機首のすぐ左に見える白い部屋が「ホワイトルーム」です。
右:STS-114での打上直前のWhite Room。画面左にオービターのハッチが見えます。ちなみに野口宇宙飛行士が掲げているのはモノポリーの「刑務所から無料で釈放」のカードをもじった"Get out of quarantine free"と書かれたカード(quarantine=隔離)。

Video : オービターに乗り込む乗組員(STS-114)

T-2:00:00 Hatch closure

打上の約2時間前、船内から飛行に使われないものが全て取り除かれ、地上作業員が退出した後、ハッチが外から閉じられます。ハッチが閉じられてから約30分でキャビン内の空気漏れのテストが行われ、異常がないことが確認された後、地上作業員もホワイトルームから退去します。

Video : ハッチ閉鎖(STS-113)

T-20 and holding - 打ち上げ20分前ホールド

カウントダウンが、マイナス20分(T-20)になった所で、いったんカウントダウンが止められます。

緊急時にカウントダウンが止められる以外にも、数回に渡って、このような「カウントダウンの停止」がスケジュールの中に組み込まれています。これは、"built-in hold"と呼ばれ、各セクションの作業のタイミングを合わせたり、打ち上げのタイミングを調整したり、打ち上げ許可をだすためのチェックを行ったりするために設けられています。

T-20分のホールドでは、フライトディレクターが各セクションのチーフと、打ち上げ前の最終的な打ち合わせを行います。

これ以降、何らかの理由で打ち上げが中断した場合は、どんなに短くても必ずこの20分前のホールドからカウントダウンがやり直されます。

打ち上げの管制は、発射直後シャトルが発射台のタワーを通過した時点で、ケネディ宇宙センターからヒューストンへと引き継がれます。よく中継を聞いていると、このT-20分のホールドの間にケネディ宇宙センターとヒューストンのPAO(Public Affairs Office)が、打ち上げの中継を引き継ぐ「練習」をしていることがあります。

Resume countdown

T-20分のbuilt-in holdが終了し、カウントダウンが再開されます。

T-9 and holding

打ち上げ9分前に、最後の"built-in hold"が設けられており、再びカウントダウンが止められます。

このタイミングで、コントロールームでは、各セクションとフライトディレクターの間で「Go/No-Go 判断」が行われ、最終的な打ち上げへのゴーサインがだされます。「FIDO?」「Go!」「Guidance?」「Go!」「Control?」「Go!」... 「We are "Go" for launch.」というあれです。

また、ISSへのドッキングなど、目標となる軌道と位置が厳密に決まっている場合には、その位置がこの時点で正確に計測され、最終的な打ち上げのタイミング調整がこのホールドを利用して行われます。

T-9:00 Resume countdown - ターミナル・カウントダウン

T-9分のbuilt-in holdが終了し、最終カウントダウン(tarminal countdown)が始まります。

T-9:00 Start automatic ground launch sequencer

ここからT-31秒まで、打ち上げに関する操作はGround Launch Sequencerと呼ばれるコンピューターが行います。T-31秒からは、シャトルのオンボードコンピューターが打ち上げをコントロールします。

T-7:30 Orbiter access arm retraction

先ほど、宇宙飛行士たちがシャトルに乗り込むのに使った、オービター・アクセス・アームが引き込まれます。

アクセスアームは、緊急時には約28秒で伸展するようになっています。

Video : STS-107でのアクセスアーム収納

T-6:15 Start Mission Recorders

シャトルの状態を記録する各種のミッションレコーダーのスイッチが入れられます。

T-5:00 Auxiliary power unit start

補助動力ユニットのスイッチが入れられます。これはメインエンジンのノズルや動翼、着陸脚、燃料バルブなどを動かすための油圧装置を駆動するためのもの、真空中でも動作する必要があるため、燃料には軌道修正などに使われるのと同じヒドラシンが使われています。

T-5:00 Arm SRB and ET range safety safe and arm devices

固体燃料ロケットブースターや外部燃料タンクに使用されている、火工品とレンジセイフティシステムの安全装置が解除されます。

レンジセイフティシステム(Range Safety System:RSS)というのは、打ち上げ中にシャトルが予定の軌道をはずれ、落下の危険性が出てきたときに、固体燃料ロケットや外部燃料タンクを爆破するためのシステムのこと。一言でいえば、自爆装置です。これまで、使用された例は一度だけ、1986年のSTS-51L、チャレンジャーの爆発事故の時です。

T-4:55 Liquid oxygen drainback begins

液体酸素のタンクが満タンになり、排出バルブからあふれ始めます。

T-4:00 Orbiter to internal power

これまで、アンビリカルケーブルを通じて外部から行われていた電力の供給が切られ、全ての電力が内部電源に切り替わります

T-3:55 Orbiter aerosurface check

大気圏内でシャトルの姿勢をコントロールする動翼(エレボン、ラダー)の動作チェックが行われます

T-3:30 SSME gimbal check

主エンジンの推力変更システム(首振り機構)のチェックが行われ、最後にエンジン点火に備え待機位置で止められます。これはノズルが全て一番外に向く位置で、エンジンが点火された際の振動などでノズル同士が衝突しないようにするためです。

Video : STS-107でのSSME gimbal check

T-2:55 Oxygen tank at flight pressure

燃料を充填しているときには、タンク内の圧力が上がり過ぎないように、排気口から気化した燃料を排出していますが、ここでそのバルブが閉じられ、ヘリウムを使って液体酸素、液体水素の両タンクが加圧されます。

T-2:55 Gaseous oxygen vent arm retraction

気化酸素排出システム―通称"ビーニーキャップ(beanie cap:ベレー帽)"が整備塔に引き込まれます。

気化した液体酸素は非常に温度が低く、そのまま排出すると排気口周辺が着氷してしまいます。そのままほうっておくと、落下した氷でタンク自身やオービターを破損してしまったり、排気が充分に行われずにタンクの内圧が高くなってしまう可能性があるため、この気化酸素排出システムを使って排気口周辺を暖めながら余った酸素を排出します。

Video : STS-107でのGaseous Oxygen Vent Arm収納

T-02:35 Fuel cells to internal

燃料電池が内部機器に電力を供給し始めます。

T+01:57 Hydrogen tank at flight pressure

液体酸素に続いて液体水素の加圧が開始されます。

T-01:00 and holding

STS-114で、打ち上げ直後に外部燃料タンクに鳥が衝突したことが分かり、STS-121からは発射台上空の安全確認が行われることになりました。問題があった場合には発射1分前にホールドがかかります。

T-01:00 Deactivate SRB joint heaters

固体燃料ロケットブースターの継ぎ目部分に設置された着氷防止ヒーターのスイッチが切られます。

T-0:31 Shuttle computers control countdown

T-31秒の時点で、カウントダウンのコントロールが、Ground Launch Sequencerからシャトルの搭載コンピューターに引き継がれます。

T-0:21 Booster steering test

T-21秒前に固体燃料ロケットブースターの推力変更システムのテストが行われ、ノズルが打上待機位置で止められます。

T-0:16 Water Sound Suppression System activate

T-16秒前に水消音システム(Water Sound Suppression System)のスイッチが入れられます。これは大量の水を発射台上に噴射して、シャトルの発射時に生じる強烈な音や衝撃波を和らげ、シャトルが破損してしまうことを防ぐためのものです。水は発射台のそばに設置された高さ88mのタンクから直径2.1mのパイプを通じて供給され、114万リットル(25mプール2.5個分)のタンクが、40秒ほどで空になります。

実はこのシステムは最初からあったものではなく、回収された固体燃料ロケットブースターから破損が見つかったことから後で追加されたものです。

右: Sound Suppression Systemのテスト 左: シャトルの右側に見えるのがSound Suppression Systemに水を供給するタンク
Video :Water Sound Suppression Systemのテスト(2004.05.10)

T-0:10 Main Engine Hydrogen Burnoff System activate

T-10秒前。オービターのメインエンジン直下で、火花が散り始めます。これは、ノズル周辺に溜まった余剰水素を燃やすためのもので、この水素が爆発してエンジンを破損するのを防ぐためのものです。

T-0:6.6 Main engine ignition

T-6.6秒前、オービターのメインエンジンが点火されます。

点火の順番はT-6.60秒に3番エンジン、T-6.48秒に2番エンジン、T-6.36秒に1番エンジン、シャトル後方から見て、右、左、中央の順番です。ただ、リアルタイムだとほとんど同時にしか見えません。直後3秒以内に出力が90%まで上げられます。

固体燃料ロケットブースターの点火(T-0秒)まで6.6秒も間を空けるのには2つ理由があります。一つは、ブースターは一度点火してしまうと止められないため。メインエンジンが点火しない、出力が安定しないなどの不具合があった場合はこの6.6秒の間にエンジンが止められ発射が中止されます(STS-55、67では実際にメインエンジンの点火直後に打ち上げが中止されています)。もう一つの理由はメインエンジンに点火するとシャトルが外部燃料タンク側に大きく傾くためです。これは、メインエンジンがシャトル全体(外部燃料タンク、固体燃料ロケットブースター、オービター)の重心からずれた位置についているためで、この傾きが元の位置に戻るのにちょうど6.6秒かかります。この傾きは外部燃料タンクの先端で65cmにもなります。

Video : メインエンジン点火のスローモーション映像(mpeg ※クリックで再生が始まります)
メインエンジンの推力変更システムのテスト〜メインエンジンの点火〜発射の様子。
よく見ていると、メインエンジンの点火直後、シャトル全体が傾ぐのが分かります
(画面では、シャトルが伸び上がっているように見えます)。

T-3 SSME Launch Position

T-3秒で、待機位置だったメインエンジンのノズルがわずかに内側を向き発射位置に移動します。

上の「メインエンジン点火のスローモーション映像」を参照してください。出力が安定した時点で、ノズルの向きが変化するのがわかると思います。

T-0 SRB Ignition / Liftoff

打上の瞬間、固体燃料ロケットブースター(SRB)が点火、メインエンジンの出力が100%まで上昇します。ほぼ同時に、シャトルと発射台を繋ぎとめている爆発ボルト(内部に火薬が仕込まれたボルト)が吹き飛び、最後まで接続されていた2本のアンビリカルケーブルが切り離され、シャトルが上昇を始めます。

Video : SRB点火のスローモーション映像(mpeg ※クリックで再生が始まります)
SRB点火〜点火の瞬間のSRB内部の様子〜爆発ボルト点火〜上昇
ビデオの最後のカットで上昇していくシャトルの下に、Sound Suppression Systemの水流が見えています。

T+00:07 Tower Clear

シャトルはSRBの点火後、0.3秒で上昇を始め、T+7秒でSRBのノズルが整備塔(Tower)の先端にある避雷針の高さを超えます。この時点まで、シャトルは打上時の姿勢を保ち、垂直に上昇します。

実は、打ち上げを行うケネディ宇宙センター(KSC)の仕事はここまで。ここから後、着陸時までのミッションコントロールは、テキサス州ヒューストンにあるジョンソン宇宙センター(JSC)で行われます。もちろん、打上の中継を行っている広報担当官(PAO)もこの時点で、KSCからJSCに引き継がれます。

STS-107の打ち上げの様子

T+00:10 Start roll program

シャトルは打上後約10秒〜18秒にかけて180度ロールを行い、背面姿勢になります。

これには2つ理由があります。ひとつは、乗組員から地上が見えるようにするため。そのままの姿勢で上昇すると機首を東に向けるにつれて、外部燃料タンクが下になって視界をふさいでしまい、地上を直接見ることができなくなってしまいます。

もう一つの理由は、シャトルにかかる水平方向の加速度(G)をプラスの方向(オービター側から外部燃料タンクへ抜ける方向)に保つためです。シャトルに限らず、ほとんどの航空機は強いマイナスのGに耐えられるようには作られていません。実は、乗っている人間にとってもGはプラスの方が楽なんです。

Video : STS-112 Prelaunch, Launch and Landing Movies
ページ中段の、「STS-112 Shuttle Launch View from External Tank」を参照してください。これは外部燃料タンクに設置されたカメラから捉えた打上の様子です。打上直後にロールを行う様子がとてもよく分かります。

T+00:18 End roll program

打上後の180度ロールは約8秒で終了します。

T+00:38 Main engine throttle down

打上げから38秒後、シャトルにかかる負荷をある一定の値以下に保ち、機体表面の温度上昇を避けるためにメインエンジンの出力が絞られます。

ちなみに、SRBの出力は飛行中には変えられませんが、あらかじめ飛行経路に対して最適な燃焼になるように燃料の量が調整されています。

T+00:52 Main engine throttle up

打上げから52秒、機体への負荷を低減するために下げていた出力が再び上げられます。 ちなみに、チャレンジャー事故が起きたのは、この「スロットルアップ」の直後でした。

T+01:00 Max Q (695 psf)

打ち上げから約1分後、シャトルは最も機体への負荷が高くなる地点を通過します。

機体が上昇するにつれて、速度が上がっていきますが、逆に気圧は低くなります。前者は機体への負荷を上げ、後者は下げます。この両者のバランスが機体への負荷を決めますが、この値が最大になる地点をMax-Qと呼びます。

T+02:00

打ち上げ後約2分間で、シャトルの総重量は約半分になります。

T+02:05 SRB separation

打上後約2分で固体燃料ロケットブースター(SRB)が切り離されます。

この切り離しのタイミングは、打上からの時間ではなく、SRB内の圧力がある一定の値(50 psi)以下に下がったのを検知して行われます。

Video : STS-114でのSRB切り離しの様子
地上から超望遠レンズによって撮影された切り離しの様子

Video : STS-114の右SRBに設置されたカメラの映像(WindowsMediaPlayer※クリックでストリーミングが始まります)
打上〜SRB切り離し〜着水までノーカットという珍しい映像(同左RSBのカメラ)

T+02:15 Start OMS assist

ここから、本来軌道を変更するために使うOMS(Orbital Maneuvering System : 軌道変更システム)が上昇力を補うために使用されます。これはSTS-90以降に付け加えられたプロセスです。

T+2:30 Last pre-TAL RTLS

ここまでは、フライトを中止(Abort)した場合、ケネディ宇宙センターへ戻る以外の方法はとることができません。この打上地へ帰還する打上中止モード(Abort Mode)のことをRTLS(Return To Launch Site)と呼びます。

ここから先は、RTLSに加えて、TOLと呼ばれる打ち上げ中止モードを使うことができます。

T+2:30 TAL available

この時点で、TAL(Transatlantic Abort Landing)が可能になります。

TALというのは、文字通り大西洋を越えて緊急着陸する打上中止モードのことです。機体は地球周回軌道に乗らず、弾道軌道を描いて太平洋の対岸に着陸します。

着陸の候補地は、スペイン、セネガル、モロッコの3ヶ所が確保されており、当日の天候などによって選択されます

T+4:00 Negative return

ここから先は打ち上げを中止してもケネディ宇宙センターに戻ることはできません。

NASA用語でいうと、ここから先はRTLA(Return to Landing Site)は行えず、ATO(Abort to Orbit)というモードが可能になるまではTAL(Transatlantic Abort Landing)しか選択肢がないということです。なんのこっちゃ?という感じですね。整理しましょう。

途中までは、速度や高度が足りず、ケネディ宇宙センターにしか帰れません(pre-TAL RTLS)。
ある程度の高度に達するとRTLSとTALの両方が可能になります(TAL available)。
やがて、高度や速度が高すぎてRTLSが使えなくなり(Negative return ※今ここです)、使えるのはTALだけになります(pre-ATO TAL)。
さらに高度と速度が上がると、中止してどこかに着陸するより軌道に乗った方が安全という状態になります(Press to ATO ※後述)。

T+4:45 End OMS assist

補助エンジンとして使われていたOMSがいったん切られます。

T+04:50 Last pre-ATO TAL

フライトを中断する場合、Negative Returnからここまでは、大西洋を横断しての緊急着陸(TAL)しか使えません。

T+04:50 Press to ATO

この時点で、3つあるメインエンジンうち1つが停止してもATOを行うことができるようになります。ここからフライト中止モードはATOに移行します。

これは、メインエンジンの失火などにより、所定の高度まで達しないものの、OMS(Orbital Maneuvering System)を使って、とりあえず地球周回軌道には乗れるという状態です。

実はこれまで、一度だけATOが行われたことがあります。1985年7月29日、STS-51Fにおいて、打ち上げの5分45秒後にセンサーのトラブルで主エンジンのうち1機が停止、ATOモードに移行しました。ただし、軌道修正が行われ、ミッションそのものは滞りなく行われました。

T+05:45 Roll to heads up

ここで、外部燃料タンクの切り離しに備えて、再び180度のロールを行い、地表に対して燃料タンクが下になるように姿勢を変更します。

T+06:50 Press to MECO

この時点で、3つあるメインエンジンうち1つが停止してもMECO(Main Engine Cut Off)の高度に達することができます。

T+07:10 Single engine MECO

この時点で、3つあるメインエンジンうち2つが停止してもMECO(Main Engine Cut Off)の高度に達することができます。

T+07:40 3G Limiting

機体にかかる加速度を3G以下に保つため、T+7分30秒あたりから、徐々にエンジンの出力が下げられます

T+08:30 MECO(Main Engine Cut Off)

メインエンジン燃焼終了。

打ち上げから約8分30秒後、メインエンジンが止められます。

T+8:50 ET Separation

外部燃料タンク(External Tank : ET)切り離し。

メインエンジンの燃焼終了から約20秒後、搭載コンピューターによって外部燃料タンクの切り離しが自動的に行われます。

外部燃料タンクの切り離し直後、タンクからオービターへ液体酸素と液体水素を供給している、燃料供給孔のふたが閉じられます。この孔はシャトルの腹部に開いており、もし仮に何らかの原因で蓋が閉じなくなると、シャトルは大気圏に突入することができません。通常、このプロセスはプログラムに従って自動的に行われますが、万が一のためにクルーがコックピットからマニュアルで閉じることもできます。

固体燃料ロケットブースターの場合とは異なり、外部燃料タンクの切り離しの際には、オービターがRCS(Reaction Control System)を噴射してタンクから離れます。外部燃料タンクに取り付けられたカメラの映像を見ていると、フラッシュのようにRCSが噴射するのが分かります。夜間の打ち上げでは余剰のガスが光って、機体がオーロラに包まれているように見えます。実はRCSの噴射音は非常に大きく、オービターの船内でまるで大砲を撃ったかのように聞こえるとのこと。

外部燃料タンクは、オービターから切り離された後、大気圏に突入して燃え尽きます。外部燃料タンクはシャトルのシステムのなかで、唯一使い捨てにされるユニットです。

OMS-2 Orbit Circularization/Orbit Insertion

第2回 軌道変更システム噴射(OMS-2)/軌道投入噴射(Orbit Insertion Burn)。

メインエンジンの燃焼終了、外部燃料タンクの切り離し直後は、まだオービターは弾道軌道に乗っています(だから切り離すだけで燃料タンクは"落ちて"いくんです)。所定の軌道に乗るためには、OMSで「最後の一押し」をしてやらなければなりません。

当然ながら、毎回目標となる軌道が異なるため、噴射のタイミング、継続時間はミッションによって変わります。

かつてはOMSの噴射は、燃料タンクの切り離し直後が最初の噴射だったため、このタイミングで行われる噴射はOMS-1と呼ばれていましたが、現在ではメインエンジンの燃焼中にOMSによる補助噴射が行われるため、燃料タンク切り離し後の噴射はOMS-2と呼ばれているようです。