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ネットワークのむこう

IT革命が世界を変えると息巻く人も、もうITは終わったと叫ぶ人も、そんなもの最初からねーよとつぶやく人も、なぜかインターネットはホームページとe-コマースしかないと思ってるみたいに見えるのはなぜだろう。確かに、ガースナーが「インターネットはコミュニケーションの道具じゃない、ビジネスの道具なんだ」そう宣言したとき、e-Bizが始まった。そう、インターネットはビジネスにも使える。でも、それだけじゃないでしょ。

森さん、メール使ったことありますか? 堺屋さん、掲示板に書きこみしたことありますか? ネットワークゲームやチャットの経験は? 掲示板に書き込んだ翌日、ドキドキしながらブックマークを開けたことがありますか? 画面上を走るチャットの文字を見ながら、ネットワークの向こう側でキーボードを叩く誰かに思いを馳せたことは?

もしIT革命と称するものがあるとすれば、それはまずなによりコミュニケーションに関るもののはず。まあ、コミュニケーションは儲からないから彼らが相手にしたくないのもわかるけどね。それにしたって、e-ビジネスにe-コマース、ブロードバンドで動画配信? 結構なことだが、どーもブロードキャスティングから抜けられないのは何故かね? ナップスターやグヌーテラがなんで革命的なメディアなのかわかる?

電話と郵便の中間にあるとても奇妙なコミュニケーションがもう当たり前になっている、そうでしょう? 農耕革命や産業革命と並べるのはどうかと思うけど、印刷技術の発明とぐらいなら充分並ぶと思うんだけどねえ。

株価が下がったから、誰もオンラインショッピングをしないから、 革命は終わったって? もうすでに世界は変わってしまっているのに何を今更言ってるの。最初のネットワークが立ち上がり、最初のメッセージがケーブルの中を流れたときに世界は変わってしまったのに。

たとえば、一つあげるならこんなのはどうだろう。

ネットを通じてぼくらは初めて「他者」と出会ったんじゃないだろうか。ぼくらは始めて「あなた」じゃなくて「だれか」と出会った。これは画期的なことだ。電話や手紙の向こうにいたのはいつも「あなた」だったし、テレビが見せてくれたのは、いつも「わたし」だった。でも、ネットワークの向こうに居るのは、「あなた」でも「わたし」でもなく「だれか」なんだ。

具体的な対象ではなく、抽象的な第三者に対してメッセージを投げることができる、こんなことができたメディアはいまだかつてない(作者と読者の関係ににていなくもないが、読者にとっては作者は「だれか」ではない)。メールを送る瞬間や掲示板にメッセージを残すときに感じる、あのネットワーク全体にたいしてメッセージを投げているような不思議な感覚は、錯覚でも何でもない。

そう、変化したことはわかる。きっと誰にでもわかる。でもどこへ行くのかは誰も知らない。これを革命といわずして何と呼ぶよ?


last update Feb.28 2001


by isana kashiwai
isana.k [at] gmail.com