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Book Review 200100829   (URL)
H-IIA打ち上げ成功記念。
ロケット文学特集その2 〜ノンフィクション篇〜

トム・ウルフ『ライトスタッフ』中公文庫(絶版)
いわずもがなか、ロケットノンフィクションの傑作。どこまでも、暗い。

立花隆『宇宙からの帰還』中公文庫(bk1)
こちらは、日本を代表するロケットノンフィクション。これまた、暗い。

中野不二男『日本の宇宙開発』文春新書(bk1)
五代 富文/中野不二男『ロケット開発「失敗の条件」技術と組織の未来像』ベスト新書(bk1)
中野不二男『ニュースの裏には「科学」がいっぱい』文春文庫(bk1)
日本の宇宙開発ならこの2冊。H-IIシリーズの話も沢山。宇宙開発はビジネスであり、政治なんだということがとてもよくわかる。必読。それにしても中野不二男しかおらんのかい。

アラン・シェパード/デューク・スレイトン『ムーンショット』集英社(bk1)
シェパードはフリーダム7で高度478kmを弾道飛行し、ガガーリンについで二人目の宇宙飛行を行った人。でも、衛星軌道には乗っていないため、「初の宇宙飛行士」ジョングレンの方が有名。1998年7月22日没。
デューク・スレイトンはジョングレンの次に飛ぶはずだったが心臓病が発覚してスコット・カーペンターに席を譲り、後に復帰してアポロ・ソユーズのドッキングプロジェクトで船長を勤めた。
2人とも「ライトスタッフ」のメンバーでありながら、おいしいところを人に取られた人たち。

アンドルー・チェイキン『人類月に立つ』日本放送協会出版()()
アポロ計画の歴史が一通り。ドラマにもなった。

ジム・ラベル/ジェフリー・クルーガー『アポロ13』新潮文庫(bk1)
映画原作。地球から一番遠いところでおこった事故の記録。ジム・ラベルはアポロ13の船長(映画ではトム・ハンクスがやってた役)。

ジーン・サーナン『月面に立った男 ある宇宙飛行士の回想』飛鳥新社(bk1)
原題はLast Man on the Moon。タイトル通り「月面に立った最後の男」の自伝。

的川泰宣『月を目指した二人の科学者』中公新書1566(bk1)
宇宙飛行黎明期に活躍した米ソの科学者、フォン・ブラウンとセルゲイ・コロリョフを通じて米ソの宇宙開発競争を描く。どっちの国もめちゃくちゃですがな。

ブライアン・バロウ『ドラゴンフライ』筑摩書房()()
米ソ宇宙開発のどろどろ、ずるする。「宇宙開発の本当」が書いてある本。読むといやーな気分になります。ええ、お薦めです、それもかなり。

ジェリー・リネンジャー『宇宙で気がついた人生で一番大切なこと』講談社(bk1)
NASAのミールプロジェクトに参加した著者が家族に当てた手紙。どこまでもやさしく、希望に満ちている。とてもいい。でも実は、まさしく上の「ドラゴンフライ」の現場から書かれたもの。それを念頭において読むとなお感動。

ジョアン・フォンクベルタ/スプートニク協会『スプートニク』筑摩書房(bk1)
ソビエトの宇宙開発史の中で闇に葬られた一人の男と一匹の犬。公式には無人とされていたソユーズ2号には人が乗っていた?という本。かなり骨太のノンフィクション、すごく面白い。そこはかとなく悲しい辺りがとてもいい。

野田昌宏『図説ロケット』河出書房新社(bk1)
大将のロケットイラストコレクション。素敵すぎるビジュアルが次から次へと・・・。「あの頃のロケット」本。嗚呼、銀色のロケットは今いずこ。

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Last update 22:07 Sep.05 2001

Book Review 2001.08.10   (URL)


今森光彦『里山の道』(bk1)
本屋で何の気なしにぱらぱらとめくって、えらいことになった。
心臓がばくばくして、涙がこぼれそうになって、
あわてて、写真集をその場において店を飛び出した。

はっきり言って、なんということもない田舎の風景写真集。
けれど、自分にとってはかなり特別な風景が写っていた。
間違いなく、僕はここで育ち、この山で遊んでいた。
土の匂いも、枯葉の感触も、風の音も、全部覚えている。

彼が故郷の森で昆虫の写真を撮っていることは知っていたし、
実際子供の頃なんども裏山で出会っていたが、
こんな写真を撮っているとは思わなかった。

昨日買って帰った。やっぱり泣いた。

Last update 19:44 Aug.10 2001

Book Review 20010731   (URL)
夏休みロケット文学特集。
なつのロケット発売記念。宇宙開発ではなくあくまでロケット文学。

■あさりよしとお『なつのロケット』JETS COMICS (bk1)
ようやく単行本化。めでたい。
なんて青臭くって、ガキっぽくて、いい話なんだろう。久しぶりに「幼心」が震える漫画。
作中のロケットの「公式」考証ページはこちらトップページ)※このページはとてもお薦め(難しいけど)。

ロケットもの小説といえば以下の3冊。さあ、銀色のロケットの夢を見よう。

■野尻 抱介『ロケットガール』富士見ファンタジア文庫 (bk1)
表紙があまりにあまりだが、中身はとても硬派(?)なロケットもの。アニメ化されるみたい

■川端 裕人『夏のロケット』文芸春秋 (bk1)
こちらは、おっさんロケットもの。

■ホーマー・ヒッカム・ジュニア『ロケットボーイズ』草思社(/)
定番。映画化もされた(見てないけど)。

どんどんいこう。技術やドキュメンタリーより、どきどきわくわくを重視。
「ライトスタッフ」が入らない理由がわかる?

■野田昌宏『宇宙ロケットの世紀』NTT出版 (bk1)
巨匠のまとめた世界ロケット史。さすが巨匠、魅力的なエピソード沢山で読ませる読ませる。

■岡田斗司夫『二十世紀の最後の夜に』講談社 (bk1)
この本で、この人に対する認識がちょっと変った。とてもセンチメンタルで、美しい「あの頃のロケット」の本。

■ジュディス・ハーブスト『星間旅行への誘い』晶文社 (bk1)
中高生向けの宇宙技術解説本だが、とてもわかりやすくておもしろい。特に前半の原子力ロケット開発のくだりがとてもいい。

■H.A.レイ『ろけっとこざる』岩波書店 (bk1)
まだ手に入るんだねえ。ぼろぼろになるまで読んだ覚えがあるが、中身をはっきり覚えていないや。

■レイ・ブラッドベリ『ウは宇宙船のウ』創元SF文庫 (bk1)
■レイ・ブラッドベリ『火星年代記』ハヤカワ文庫 (bk1)
ロケット文学といえば、この人でしょう。
上は短編集の表題作。女の子が王子様を待つように、男の子は「玄関先の制服の男たち」を待っていたものだ。
下は第1章が「ロケットの夏」冒頭の一文はロケット文学の歴史に残る名文。

■相島敏夫、餌取章男 『月を歩いた二時間十五分』ポプラ社/人類の記録シリーズ1 (NASDA紹介ページ)
絶版・入手困難。基本的に手に入る本しか紹介しないつもりだったのだが・・・
個人的に思い出の1冊。遠い昔に読みふけった覚えがある(誰か持っていたら一万円でも買いますです)

Last update 14:07 Jul.31 2001

2001.07.22   (URL)
"That's one small stap for a man‚ one giant leap for mankind."
-- Neil A. Armstrong --

Mr.Armstrong。
あなたが言ったように、あなたの一歩はとても大きかった。
ぼくらは、あなたの一歩より大きな歩みを、もうこれ以上踏み出すことはないんじゃないだろうか? いつしか僕らは大人になり、歩き方を覚えて、昔よりも上手く歩くようになった。つまづくことはほとんどないし、一歩一歩確実に歩くことも覚えた。でも、きっと、あの頃のような無茶はもうしないし、もうできないだろう。

Last update 00:24 Jul.23 2001

2001.07.16   (URL)
星の話をしよう。

いまは、ちょうど火星が地球に再接近する時期に当たっている。夕方、日が落ちたころに南の空(南南東)を見上げると、ぎらぎらと赤く光る星が見えるはずだ。晴れていれば絶対に見つけられる。あれが火星。でも、今、話題にしたいのはあの惑星のことではない。

都会でも条件がよければ、火星のすぐ右側にもう一つ小さな赤い星が見えるはずだ。さそり座アンタレス。空気の綺麗なところならば、天に向かってはさみを振り上げるさそりの姿と、その心臓に燈る赤い光が見えるだろう。(アンタレスはラテン語でコル・スコルピィ、「さそりの心臓」を意味する)

アンタレスは、太陽から600光年の距離にある老齢の星。内部が不安定になっているため脈動していて、約5年間で0.9等から1.8等まで明るさを変える(長周期変光星)。また、緑色の暗い伴星が存在することでも知られている。(肉眼では確認できない)。

あの星を称して「ルビーよりも赤く透き通り、リチウムよりも美しく酔ったようになってその火は燃えている」といったのは宮沢賢治。銀河鉄道の夜に登場する蠍の火の逸話はとても美しい。ちょっと長くなるが引用しよう。

 川の向う岸が俄かに赤くなりました。楊の木や何かもまっ黒にすかし出され見えない天の川の波もときどきちらちら針のように赤く光りました。まったく向う岸の野原に大きなまっ赤な火が燃されその黒いけむりは高く桔梗いろのつめたそうな天をも焦がしそうでした。ルビーよりも赤くすきとおりリチウムよりもうつくしく酔ったようになってその火は燃えているのでした。
「あれは何の火だろう。あんな赤く光る火は何を燃やせばできるんだろう。」ジョバンニが云いました。
「蝎の火だな。」カムパネルラが又地図と首っ引きして答えました。
「あら、蝎の火のことならあたし知ってるわ。」
「蝎の火ってなんだい。」ジョバンニがききました。
「蝎がやけて死んだのよ。その火がいまでも燃えてるってあたし何べんもお父さんから聴いたわ。」
「蝎って、虫だろう。」
「ええ、蝎は虫よ。だけどいい虫だわ。」
「蝎いい虫じゃないよ。僕博物館でアルコールにつけてあるの見た。尾にこんなかぎがあってそれで螫されると死ぬって先生が云ったよ。」
「そうよ。だけどいい虫だわ、お父さん斯う云ったのよ。むかしのバルドラの野原に一ぴきの蝎がいて小さな虫やなんか殺してたべて生きていたんですって。するとある日いたちに見附かって食べられそうになったんですって。さそりは一生けん命遁げて遁げたけどとうとういたちに押えられそうになったわ、そのときいきなり前に井戸があってその中に落ちてしまったわ、もうどうしてもあがられないでさそりは溺れはじめたのよ。そのときさそりは斯う云ってお祈りしたというの、
 ああ、わたしはいままでいくつのものの命をとったかわからない、そしてその私がこんどいたちにとられようとしたときはあんなに一生けん命にげた。それでもとうとうこんなになってしまった。ああなんにもあてにならない。どうしてわたしはわたしのからだをだまっていたちに呉れてやらなかったろう。そしたらいたちも一日生きのびたろうに。どうか神さま。私の心をごらん下さい。こんなにむなしく命をすてずどうかこの次にはまことのみんなの幸のために私のからだをおつかい下さい。って云ったというの。そしたらいつか蝎はじぶんのからだがまっ赤なうつくしい火になって燃えてよるのやみを照らしているのを見たって。いまでも燃えてるってお父さん仰ったわ。ほんとうにあの火それだわ。」
「そうだ。見たまえ。そこらの三角標はちょうどさそりの形にならんでいるよ。」
 ジョバンニはまったくその大きな火の向うに三つの三角標がちょうどさそりの腕のようにこっちに五つの三角標がさそりの尾やかぎのようにならんでいるのを見ました。そしてほんとうにそのまっ赤なうつくしいさそりの火は音なくあかるくあかるく燃えたのです。


汽車がサザンクロスステーションを出たあと、ジョバンニは朋友カムパネルラとの別れの直前にこう叫ぶ。

僕はもうあのさそりのようにほんとうにみんなの幸のためならば僕のからだなんか百ぺん灼いてもかまわない。

あの星を見上げて、オリオンを刺し殺した蠍や、火星に反抗する星(アンチ・アーレス)の姿ではなく、2人の少年の旅路とその勇気を思うことが出来るのは、とても幸せなことだと思う。

Last update 18:37 Jul.16 2001

今夜はブギーで行こう   (URL)
2001年6月21日ジョン・リー・フッカー死去。享年83歳。
知らなかった・・・呆然(泣)。

足をべちべち鳴らしながら、ギターをじゃかじゃか弾いて、泥くさーいブギをうなるじじいになんであんなにはまったのか、今でもよく分からない。R&Bは嫌いではなかったけれど、どちらかというとすっきりした奴しか聞いていなかった私をこってりブルースへ引きずり込んだのは、この爺さんのせいだ。

John Lee Hooker(1917.8.22 〜 2001.6.21)
ミシシッピ州クラークスデイルの分益小作人の家に生まれる。継父のウィルムーアにギターを習う。メンフィス、デトロイトと移り、昼は工場で掃除夫として働き夜はナイトクラブで演奏する。1948年、モダンレコードより「Boogie Chillen」でデビュー。以後デトロイトブルースの大看板として活躍。『ブギの神様』



一番分かりやすい説明としては、映画『Blues Brothers』でアレサ・フランクリンの経営しているコーヒーショップを2人が訪れるシーン、道端でギター弾きながら歌っているのがジョンリー。私はこの曲「Boom Boom」で落ちた。

ジョンリーを聞いていたら、無性に聞きたくなった。
日本の「ブギーの女王」笠置シヅ子の『ヘイ・ヘイ・ブギー』“笑う角にはハッピーカムカム”

あー涙出てきた。

Last update 15:28 Jul.16 2001



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